洒落怖
田舎

この怖い話は約 3 分で読めます。

初心者なりに思うのは、アクセルターンはスロットルを開ける思い切りが大事で、
変にびびって遠慮するとタイヤが滑らずグリップしちゃって倒れちゃったりするんだよ。

で倒れた。
倒れ際に未練がましく握ってた右手(スロットル)のせいで、バイクが変に暴れて
草むらにすっ飛んでいった。その時“パキッ”てバイクが倒れた音らしくない、乾いた音がした。

あれっ何か割れたかなって思ってバイクに駆け寄ると、バイクの下敷きになった草むらの中に、
釘のささった板が何枚か見える。もともとは何か一つのものだったみたいで、
それにバイクを突っ込ませて壊してしまったんだと悟った。

まずいかなと思い、周囲を見渡したが田舎なので誰もいない。
そもそも草むらの中にあるようなものだし、それほど重要でもないだろう、
せいぜい『私有地立入禁止』の看板だっただろうと思って、そそくさとバイクを起こして逃げるようにその場を去った。

791 ちょっときいてよ sage New! 2008/10/11(土) 03:44:03 ID:Z7x12il40
その後、農家風のおじさんが言っていた『そこ』らしきところにたどり着き、細い道を登っていったら
それらしい家があった。オッサンの家だった。日も落ちてきたころのようやくの到着だった。

マジで『おお!よく来たな!』っていうウルルン再会的展開になって、
オッサンが『今日は泊まってけ』と言ってくれて、泊まることになった。
奥さんもいい感じの人で、田舎風なあったか料理を出してくれてみんなで一緒に食べた。
一人暮らしの俺は久々のファミリー感にうっとり酔っていた。

しかし夕飯を食ってる最中に、頻繁に電話がかかってくる。
奥さんが主に出るのだが、電話の内容はこうだったそうだ。

『外に停まっているバイクはどうしたんだ?』
『お宅の家を探す余所者がいたがどうなった?』
『今日はにぎやかなようだがどうしたんだ?』

俺が今日出会った人、俺を目にした人からの電話だ。

都会に慣れていると忘れがちだが、そういえば田舎の人のネットワークとはこういうものだった。

周りがすべて他人という都会とは違い、周りがすべてつながっているのが田舎なのだ。
自販機で会ったおばあちゃんも、農家のおじさんも、道ですれちがった車のドライバーも
みんなつながっているんだ。これが田舎の人のネットワークなのだ。

792 ちょっときいてよ sage New! 2008/10/11(土) 03:45:05 ID:Z7x12il40
風呂まで沸かしてもらい、しかも一番風呂までごちそうになりながら俺は冷静に考えていた。

ここに来るまでに、俺は誰かに無礼な真似を働かなかっただろうか…?

このネットワークの中での出来事は即座に知れ渡る。
もちろんここの家のオッサンにも。やさしい奥さんにも。明日帰る時に道ですれ違う全ての人にも。

俺の頭の中では草むらの中の板きれがチラついていた。

この怖い話にコメントする

田舎
関連ワード