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母の体験
この怖い話は約 2 分で読めます。
夜が明けてきた頃に母親と兄姉が帰ってきたのが、足音で分かったそうだ。
あの塊を見つけたらどうするんだろう・・と思っていると、庭で母親が一番上の兄に何か叫んで、
その兄がまたどこかへ走って行ったのが気配で分かった。
母親が家の中に入ったのを確認して、飛び起きて外で人が死んでる、と。一体何が起きたのか、と
聞いてみると、母親は言葉少なげに語り出した。
広島市の中心で新型の爆弾が落ちた。
何万人という人が死に、生き残った人も酷い火傷を負ったまま市外へ逃げてきている。
外に倒れている人も恐らくそうしてなんとかここまで逃げ延びて来たのだろう。
今、村の公民館にはそうして逃げてきた人が数百人とおり、みな酷い火傷や
力尽きた人、とそれはもう見るに堪えないくらいの修羅場だ。
と聞かされた。
翌日、人手が足らないということで公民館に駆り出された母も・・・一歩足を踏み入れると
それはもうまさしく地獄絵図だったという。
以来、母は毎年8月6日の8時15分には黙祷を欠かさない。
そんな俺も母に言われてずっと同じようにその時刻には黙祷をするようにしている。
今となってはもう遠い昔のことのようだが・・・実際に母にこの話しを聞くと
決して遠くない昔に、想像もつかないことがあったと実感させられる。
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