洒落怖
呪われたツーリング

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心拍数が跳ね上がるのが分かる。得体の知れない何かがすぐそばに居る恐怖。

「ゴトッ」

今度は少し離れたところから音がした。目をやるが何も見えない。緊張感からか身動き一つ取る事が出来ない。額から汗が流れる。
…初めて金縛りを経験した。目だけを動かし周りを見渡す。
すると俺の今居る場所の正面、少し低い場所にある家の窓を月明かりに浮かんだ黒い影がスッと横切るのが見えた。また少し間を置いて横切る。影が往復しているように見えた。
歩き回っているのか?俺の背後の家からも相変わらず音が聞こえている…。

33 本当にあった怖い名無し 2009/09/06(日) 19:20:43 ID:rYkHSOAHO

もはや俺の中の恐怖心は耐え難いものになっていたが、なにしろ身体が石の様に固まって動けない。
それに少しでも動いてこの廃墟の中に棲む何かに存在を悟られれば大変な事になる気がする。目を動かし様子を伺う。
暗さに目が慣れたのか先程物音がした方を再び見ると、井戸が見えた。蓋が地面に落ちている。そしてついに俺は見た…

井戸の中から目だけを出してこちらを見ている女の顔を!

ああ…前の家の窓にも白い顔が張り付きこちらを見ている。

そしていつの間にか足音は止み、俺の背後のスリガラスにも顔が張り付いて目玉をこちらへ向けている…

「うわぁっ!!」
思わず声が出た。その瞬間体が動くようになった。
メットをひっ掴み全力で来た道を駆け戻る。懐中電灯を使う事も忘れ月の光を頼りに森を走った。とにかくあの村から遠ざかりたかった。

脇腹が痛くなるまで走り、あとは歩き続け朝になるのを待った。とても立ち止まる気にはなれなかったからだ。
東の空が明るくなるのと町に辿り着くのとほぼ同時だった。その日の始発高速バスに乗り帰ることにした。バイクは地元の業者に引き上げてもらい廃車。
体もあちこち打撲だらけでまさに呪われたツーリングとなってしまった。

この出来事を思い出すと本当に幽霊の類いは存在するような気がする。余りにリアルな体験だった。
あと、この廃墟を撮影した写真に幽霊らしきものは写っていなかった。
しかし確認してみて成る程これは怪奇現象も起きると思った。
当時気が付かなかったが、廃墟の後ろの一段高くなった場所に苔むした墓石が何柱かフラッシュに浮かび上がっていたのだ。

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