洒落怖
オンマシラの儀

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761 757 sage 2009/09/11(金) 01:12:27 ID:GzzUdT+a0
猿の死体が着物もろとも燃えていく。あたりに焦げ臭い匂いがたちこめ、その間中、
じい様と取り巻き達はお経のようなものを唱えていた。しばらく経って猿が十分に焼けたと
判断したのか、取り巻き達は猿を火の中から引っ張り出した。

その後、焼けた猿と俺は広間に戻された。広間ではいつの間にか宴席が準備されている。
宴席の中央に、お供え物をする台のようなものがあり、焼け上がった猿はそこに置かれた。

じい様がまず、台のまわりを一周すると、取り巻きの一人が猿を切り分け始めた。
じい様は俺に同じように一周するように促すと、切り分けられた猿の肉を食い始めた。
俺が恐る恐る一周すると、じい様は俺にも猿を食えと言う。

俺はもう限界で、ほんの少しだけかじった。焦げた部分だけが口に入って、苦かったことしか
覚えていない。じい様は俺の食った量が不満だったようで、もっと食え、と迫ってきたが
田舎じみた風習に付き合わされるのはもう嫌だ、と俺の中で怒りが爆発し、じい様の家を
飛び出した。

その後、じい様が追ってくるようなことはなかったが、なんとなく近所からはいい目で
見られなかったように思う。俺は高校を卒業して、他県の大学に進学した。親は下宿に
何度も足を運んでくれたが、俺が実家に行くことはなかった。親もそれとなく「来るな」
というオーラを出していた。

762 757 sage 2009/09/11(金) 01:15:53 ID:GzzUdT+a0
そんな親から、「帰って来い」と連絡が来たのは俺が他県に就職してから数年が経ってからだった。
盆休みを利用して実家に帰ると、何も変わらない当時のままの風景があった。

じい様が死んだ、という話は帰省初日の夜に親から聞いた。病死だったそうだが、死ぬ直前に
ふと俺の名を呼び、無事で生きているかを心配していたという。

当時は親にも聞けなかったが、思い切って「オンマシラの儀」について聞いてみた。
親曰く、大昔にこの集落の人間が、山の神の使いである猿を殺してしまい、以来集落全体に
猿の呪いがかけられてしまったと。特に長老であったじい様の家系は、今で言う「奇形」の
子供が生まれるようになってしまい、呪いを解くためにあのような儀式をしていたと。
集落で生まれた子供が17歳の時に、猿の呪いに打ち勝つように猿の肉を食わせるという
儀式で、親達も17歳の時に猿を食わされたと。
ただしじい様の家系は一番強く呪いがかかっていたので、年齢を問わず、事あるごとに
猿を食っていたと。

そこまで聞いた俺は、儀式当時のじい様を思い出していたが、じい様の顔は毛深く、赤みがかって、
しわくちゃで、とても猿に似ていた。猿を食うことが呪いを解くことと信じていたようだが、
食うことで呪いを強めていたんじゃないか。

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