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293 278 巨木(1/5) sage 2009/06/23(火) 00:18:32 ID:yWUlqaRb0
この話は以前俺が旅先で経験した事実に基づいて書かせてもらう。
N県の温泉へ車で2泊3日の旅行へ出かけた時の話。
移動の途中で「森の巨人たち100選」と書かれた標識が突如現れた。
どうやら全国の国有林の中から100本選ばれた巨木の一つらしい。
特に巨木には興味の無かった俺だが、とりあえずどんなものなのか気になって、
吸い込まれるようにその場に車を停めた。
車の後部座席には妻子を待たせたまま、一人で見に行くことに…。
入口には巨木に関するちょっとした情報が掲示されていて、
それを一瞥してから緑の絨毯のような切り開かれた道を登っていく。
何度か折り返しながら500m程度進むと、巨木への道のりを示す寂しい看板が現れた。
そこから先の道は道幅がほんの50cm程度しかなく、
良く見てみれば雑草がかなり大きく育っており、
最近あまり人が通ったと思われる形跡もない。
『こんな細い道を進んで行くのか…。』
その日はぐずついた天気で、すでに夕方に差し掛かる時間帯のため、
辺りが薄暗くなりかけている。でもここまで来たのだからと思い、
少し迷った末に再び登り始めることにした。
294 278 巨木(2/5) sage 2009/06/23(火) 00:19:15 ID:yWUlqaRb0
途中「この地域には野生のクマが生息します」という観光案内所の言葉を
思い出してビビりながら、拾った棒で適当な物を叩いて音を出しながら、
残りの行程を突き進む。
しばらくして汗をかきながら、どうにか巨木まで辿り着くことが出来た。
これが100選に選ばれるほどの木なのかと思って徐々に近づいていく。
石碑があり樹齢1000年以上という記述を発見した。
その時、不意に「ポカーン…」という音が遠くで鳴り響いた。
先ほどまで俺がクマ避けに出していた音に若干似ているが、もっと力強い音だ。
『俺の他にも誰かこの森にいるのかな?』
咄嗟にそう考えた。だが、音の聞こえてきた方向は今来た道とは違うようだ。
再びポカーンという音が聞こえてくる。先ほどよりも少し方向がはっきりとした。
それは巨木を挟んだ反対側の方向から聞こえてくる。
だが、見たところ巨木の部分で道は行き止まりになっており、
それ以上先には人が入れそうな道が見当たらない。
暗くて深い森がずっと先の方まで続いている。
そうこうしているうちに、また音が聞こえてくる。
しかし今度は先ほどとは別の方向から聞こえてきたようだ。
その音はまるで最初に聞こえた音に呼応するように、
誰もいない森の中にこだました。
その音の余韻が消えかけた時、これまでの2つとは違う場所から
「ポカーン…」という音が聞こえてきた。
辺りは見る見るうちに暗くなっていく。
湿った土から立ち込める霧が少し濃くなってきた。
今来たばかりの道が急速にかき消されるような錯覚にたじろいだ。
