洒落怖
指輪

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590 スレ208の128 sage 2009/05/05(火) 22:25:56 ID:+2c9Ghac0
……さっき居なかったよな?猫。それでここ、4階だよな?外に木の枝とかあったっけ?
慌てて鞄を置いて窓に駆け寄って見ると、窓の外には何もない。
木の枝が張り出してもいないし、建物の外側のどこにも猫はいないし、
勿論落ちて死んでたりもしない。
……4階位なら飛び降りて逃げられるモンなのか?と思いつつ戻ってAの鞄を手に持って、
仰天した。絶対さっきまでなかった派手な裂き傷が鞄についてた。
駄目押しにもう一度、足元で「にゃー」って声がするに至って、ようやく俺は、
Aがしきりに気にしてた例の指輪が俺の持ってる鞄の中にあるんだ、という事実に
気がついた。
「………」
ぞく、と背筋が寒くなったところへ、また「にゃー」さらにガリッて音が続いた。
見下ろすと、俺の靴ヒモが結び目のとこで何箇所か裂けてた。もちろん猫は居ない。
にゃー。にゃー。にゃー。
かなりの至近距離に聞こえるその声は、何だか段々と嫌な感じになってきてた。
冷や汗をかき始めた俺の周りをうろうろしてた鳴き声に、ぼそっと暗い感じの
人間の声が重なった。
『……なんか、死んじゃえ。死ねばいいのに』
エコーをかけたような変な声だった。
「……!」
硬直した俺は、咄嗟に大急ぎで携帯電話を出して、速攻で電話をかけた。
プルル、プルル、と呼び出し音が鳴る間も、足元で見えない猫が鳴いてた。
靴や鞄がカリカリ音を立てて、ちらっと見下ろすと床にも何だか、
傷が増えてきてるような気がした。
ガリッと衝撃があって足首に痛みが走ったのと同時くらいに、電話が繋がった。
『はーい、もしもしー?』
「Bか!?あのさ、俺だけど、えっとAのこと聞いた?」
有難いことに、Bは学内にいた。急いでAの怪我の件を説明し、
荷物を預かってくれと頼むと、Bは快諾した。
電話を切った俺は、Aの鞄を持ってダッシュしてBと待ち合わせた場所へ向かった。
エンドレスに足元から聞こえる猫の鳴き声に混ざって、ぽそ、ぽそ、と
『死んじゃえ』とか『死ねばいい』とか呟く女の声がし続けた。

591 スレ208の128 sage 2009/05/05(火) 22:27:08 ID:+2c9Ghac0
建物を出たあたりで、しゅっ、と足の間を通り抜けるような感触がして、
足がもつれて思いっきりこけて、止めてあった自転車に突っ込んだ。
「うわー俺君!?大丈夫?」
待ち合わせしてた自販機の所から、大声で言いながらBが駆け寄ってきた。
「俺君、手!それに足も血が出てんじゃん!」
Bが騒ぎながら俺に手を貸してくれ、荷物を持ってくれて、気がついたら
猫の声も変な女の声もしなくなってた。

ただ、後で確認したら、やっぱり足の傷は自転車の金具で切ったんじゃなく
爪で引っかかれた傷でした。

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