洒落怖
ナルコレプシー

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 吊り橋を渡ったところに唐突にレバーがあった。瞬間ピンと来た。後ろを振り返ると
黒い霧のようなモヤモヤと、そこから生える無数の手。思った通り距離を取ることが出
来ていた。その姿で吊り橋に手間取るってなによw、と若干の余裕もあった。レバーに手
をかけ、思いっきり下に引く-

 「プシュー」と音がして、電車のドアが開いた。「稲毛~、稲毛~」。思った通り、
目を覚ますことが出来た。以前のように前後不覚ということもない。2つ乗り過ごして
しまったが、2つだけだ。その時は深く考えず、反対の電車に乗って帰った。

541 3/4 sage 2009/12/20(日) 21:53:20 ID:Q16pOgJe0
 こんな夢も忘れかけていた頃…走っている。山の中。道が2手に。ん? そうだ、電
車で座ったんだ。首の後ろに時々触れる冷気。この道は右だ。あの吊り橋、走って渡る
のは中々気持ちよかったっけ。そして、レバー…レバー? 無い! レバーが無い! 
ここで初めて冷や汗がどっと吹き出してきた。振り返ると、例によって吊り橋で難儀す
る黒い雲と無数の手。しかし今度は余裕はなかった。また全力で走り始めた。

 どこをどう走ったかは分からないが、また見覚えのある分かれ道。右はダメ、今度は
左だ。霧のようなもやもやはすぐそこまで迫っているらしく、時々首の後ろに冷たいも
のが触れた。

 また吊り橋だ。これはチャンス。心臓が口から出そうなほどバクバクしていたが、最
後の力を振り絞って全力で渡る。レバーがあった。やった! 助かった…後ろを見ると
やや吊り橋を渡ることに慣れたのか、以前より近くまでモヤモヤは迫ってきていた。お~、
学習してるwww と若干の余裕をブッコキつつ、レバーを引く-

 「千葉~、千葉~。」ふぅ、危なかった…。しかしホント、レバーがなかったときは
ドキッとしたぜ。車内アナウンスはここ千葉駅で終点、東京駅への折り返し運転ではな
く車庫に入ることを伝えていた。車掌に促され、組んでいた足のしびれをかばいつつホー
ムに降り立った…

542 4/4 sage 2009/12/20(日) 21:54:20 ID:Q16pOgJe0
 ん? 一つの疑問が脳裏に浮かんだ。この前は稲毛、つまり終点の一つ手前でレバー
を引いた。これは右の吊り橋の道のレバーだ。今回は終点でレバーを引いた。これは左
の吊り橋の道。そして車庫への回送電車となり、このあとドアが開くことは無い…。

 妄想だと思いつつも、私は快速電車の利用は止め、並走する各駅停車を利用するよう
になった。もちろん絶対に座らない。…しかし、「猿夢」を読んだ今、普通に寝るのも
恐怖を感じるようになった。睡眠不足になってきたのか、仕事中にも意識が飛んでしま
うこともちらほらと。私は今、覚醒剤の入手を真剣に考えている…。

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