洒落怖
魔樹

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138 【魔樹】全10レス sage 2011/12/04(日) 18:45:50.22 ID:bPIL5hLh0
「ヒィィィィ!!」
俺は思わず声を上げた。
目だ!
木の皮の隙間から何かがこちらを見ている!目をカッと見開き、俺をじっと見据えている!
俺は反射的に後ずさった瞬間、足がもつれて転んでしまった。尻餅をついた格好だ。
「バキッ!ベキッ!メリメリ!」
朽木の内側から不気味な手が這い出てくる。明らかに人間だ。
この朽木の中に人間が入っていた。内部は空洞で、そこに人間が入っていたのだ。
そして…見ていたのだ。ずっと…俺がこの部屋に来てからずっと。
朽木の皮が次々と剥がされていき、薄暗い部屋の中でもその姿がはっきりとしてくる。
そこに居たのは…なんとBだった。
髪がほとんど抜け落ち、肌は紫色に変色している。顎がだらりと下がり、唾液や泡を吹きこぼしている。
黒いムカデのような気味の悪い虫が、何も着ていないBの身体を這い回っていた。
おぞましい姿ではあるが、Bであるとすぐに分かった。

139 【魔樹】全10レス sage 2011/12/04(日) 18:46:42.75 ID:bPIL5hLh0
「あ…B?…ぁあ…」
恐怖で言葉にならない。
Bの身体は所々出血している。あの釘が刺さっていたのだろうか?
血走った眼球は、異様な速さで縦や横に動いていた。
「フシュ!フシュ!」
唾液を撒き散らしながらフラフラとこちらへ歩いてくる。
「く…来るな!」
全身がガタガタ震えて力が入らない。
俺は尻餅をついたままBを凝視することしか出来なかった。
もうBは目の前に居る。
「グゥエ!オェ!」
苦悶の表情の後、Bが唐突に嘔吐した。
緑色のネバネバした液体にまみれた奇妙な物体が、俺の足元に吐き出された。
今まで見たことも無い物体だ。知ってはいるが、知らないモノ。

140 【魔樹】全10レス sage 2011/12/04(日) 18:47:51.47 ID:bPIL5hLh0
それは…人間だった。小さな人間だった。いや、「人間の形をした何か」だった。
それは無表情でじっ…と俺を見つめている。
Bは自らが吐き出したその物体を暫く眺めていた。
そして、ゆっくりとこちらを向き、満足げな表情で「ニタァ」と笑った。
Bと目が合った瞬間、恐怖で気が狂うかと思った。
いや俺は狂っていたのかもしれない。
それはBのせいでは無い。無論Bも凄まじく恐ろしかった。
だが見たのだ、その時、もっと恐ろしいモノを。
Bの背後にある朽木の裂け目から「Bと同じ姿をしたモノ達」が這い出てくるのを。
生存本能だろうか?真っ白な頭の中でも、「逃げなければ」という強い衝動だけが俺を突き動かしていた。
俺は一気に部屋の外へ飛び出し、玄関へ駆け出した。

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