この怖い話は約 3 分で読めます。
それを聞いて僕も逃げることにした。
まだ見てないけど、そんなもん見たくない。
しかし、辞めたいと申し出た僕に対してオーナーは必死で引き止めた。
オーナーもそのオッサンを見たらしく、「見えない」僕のことをとても貴重な存在に思ったらしい。
時給を3倍にするから働いてくれと言ってきた。
当時の僕の時給は1000円。マックのバイトが680円の時代で、飲食店の時給1000円は貧乏な田舎モノの僕にとって魅力的だった。
それが3倍になる。時給3000円だ。休憩を差し引いて一日9時間働くと一日で27000円。
毎日やれば月30日として810000。
僕はバイトを続けることにした。
370 バイト ◆B81hPRrN9Q New! 2011/07/07(木) 01:14:35.27 ID:RpwkqoiF0
昼間の人達は誰もそのオッサンを見ていないらしい。
深夜の営業に関して全権を渡された僕は、バイトを雇うことにした。一人では何もできない。
時給を1200に上げて募集をかけたところ、すぐに応募があった。
しかし、雇った人は皆すぐに辞めていく。
理由は皆「怖いから」とのことだった。
事務所で面談をしていた人が僕の顔の少し横を見て固まったこともあった。どうやら見えたらしい。
一向に僕は何も見ない。
なぜ僕には見えないのかはわからない。
逆に見てみたいとも思ったが、やはり見えたら怖いと感じるのだろうか。
僕が鈍感なのだろうか。
それとも所謂守護霊というものに守られているのだろうか。
わからない。
371 バイト ◆B81hPRrN9Q New! 2011/07/07(木) 01:15:33.53 ID:RpwkqoiF0
根気良く募集を続け、4人が残った。
ワケあり主婦のTさん。
フリーターのMさん。
人生の一発逆転を狙うNさん。
ボクシングのライセンスを持つSさんの4人だ。
どうやら僕の店は地元では「出る」「見えないヤツはおかしいってくらいに出る」と有名になっていたらしい。
出るのであれば是非とも見たい。
見える上にお金ももらえるなんて素敵だ。
そういう魂胆の元に応募してきた人々だった。
全員が「見える人」らしく、そういったものに慣れていたように思う。
彼らはイカれていた。
事務所の隅に向かって「よっ」と手を挙げて挨拶をするNさん。
ロッカーの前で空間に質問をしているTさん。
「煙かけたら消えちゃったよ~」とはヘビースモーカーのNさんの言だ。
Sさんだけは少し恐怖を感じるらしく、でも「もう人間相手じゃ恐怖って感じないんすよね。久々っすよこの感じ」と言っていた。
372 バイト ◆B81hPRrN9Q New! 2011/07/07(木) 01:16:42.61 ID:RpwkqoiF0
ヘビースモーカーはMさんだった…。失礼。
結局僕はその仕事を6年間続けた。
その間に何人かバイト希望者が来たが、結局はすぐに辞めていった。僕を含めたその5人で6年間。