洒落怖
深夜の潮干狩り

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890 3P sage 2010/10/05(火) 20:03:08 ID:UdLHnodm0
でも彼女は見なかった。
「あとで」と言って真っ直ぐ前を向き、俺の手を強くにぎっていた。
「なんだよ・・」と思った時、ふと不思議に思った。
学生帽もめずらしいけど、この時間に学生服??民家からも歩くには距離ないか?
あれ?と思いもう一度見ると彼の姿はもう無かった。
この間、おそらく1、2分程度。
堤防はずっと先まで見渡せる。月明かりと街灯で真っ暗な場所は無い。
でも怖いとは感じなかった。
「もしかしたら幽霊って、意外に普通に見えていて気付かないものなのかもしれないなー」と思った。

俺は、彼女が見ていたらどう見えたのか、と知れなかった事がとても残念だった。
あまりに直線的に歩く彼女に対し、共感できなかった事を不愉快になりながらも
もしかしたらトイレなのか?と考え 車まで俺も急ぎ始めた。

彼女は車のドアを開けると駆け込むように乗り込み、コンビニ行こう!と強めに言ったので
「やっぱりトイレだったのか。言えばいいのに・・」と思いつつエンジンをかけた。
車がマリーナの駐車場を抜けてコンビニの明かりが見えた頃、彼女の肩の力が抜けたように感じた。
そこで俺は「さっき堤防で学生帽かぶった男の子見たよ~」と切り出してみた。
すると彼女はいきなり泣きだし、「早くコンビニへ行って!」と叫んだので驚いた。
そんなに余裕が無かったのか・・と思い駐車場へ着くと
「笑ってた!」「女が耳元で笑ったの!」と泣き出した。

彼女の話によると、貝を拾った後 何か聞こえたような気がして海面を見たらしい。
すると藻の中に女性の頭部が見えて 口元ギリギリまで水に浸かってたと。
大きく開けた女の口は1/3は水の中にあったのに 彼女の目を見ながら甲高い笑い声をあげていた。
波打ち際からそう距離は無く、海水浴場にもなるあの場所は大人の膝までしかないはずだ。
そこから彼女は近付いてこようとしているように見えて 急いで場を離れたかった。
車に乗る直前、ミラーに女の全身が見えた。そして耳元で笑い声が聞こえた。
笑いながら女は「次はお前だ」と言ったと・・。

891 3P sage 2010/10/05(火) 20:04:45 ID:UdLHnodm0
俺は半信半疑で震える彼女が落ち着くまで待った。
コンビニで暖かいココアを買い、飲ませた。
次はお前ってなんだろう・・と思い 「そういえば」と貝の事を思い出した。
いい貝あったから良かったと思おうよ。貴重な体験だったよね。となだめようと
貝をポケットから出してみた。
コンビニの明かりに照らされたそれは、貝ではなかった。
なぜ巻貝だと見間違えたのかわからないほど小さな
人間の奥歯に見えた。
俺たちはコンビニのゴミ箱に歯を捨て、もう明るい道を無言のまま帰った。

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深夜の潮干狩り