洒落怖
呪いの人形

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534 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 03:38:34 ID:8Rm6kYGVO
次の日の深夜、仕事を休みにして貰った俺はAと一緒にその小さな神社に向かった。
自分の目で人形を確認する。釘は中途半端に打たれ、俺の名前が書かれたそれはぴらぴらと風に揺れる。
犯人はこんなので儀式が成功すると思ったのだろうか。
Aはその人形と自分が撮った写メを見比べ、
「よし、まだ来てない」
と判断し、俺達は人形がある方向とは逆側の松林に身を潜めた。
Aが持って来ていたらしいビールを開ける。何口か飲んだ後飲むか? と聞いてきたのでありがたく頂く。
俺達は一本のビールをちびちびと回し飲みしながら、犯人が来るのを待った。
その内三時になって、来た。
 
「あれ、ママ電話じゃないか」
現れたそいつを見てAはそう言った。
ママ電話というのはあだ名で、俺達と同じく定時制の高校に通うクラスメイトだ。
ママ電話というのは、授業が終わる度に携帯で自分の母親に電話し、
「ママ、今○○の授業が終わった。もう帰りたいよ」
なんて言うことから付いたあだ名だ。
歳は大体当時の俺達と同じくらい(二十歳前後)。
「いや、なんでママ電話が」
A程目が良いわけじゃない俺には判別がつかない。
ママ電話らしき人影は、辺りをくるくると見回しながら俺達の隠れている松林とは反対側の松林に消えた。
「あれは絶対ママ電話だって」
「まさか」
俺達は確かめることにした。
松林から出て、小さい社の裏を回って反対側の松林に入る。
物音を立てないように息を殺して行くと、音がしてきた。

こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん。
規則正しい小さな音がして来る。気持ち悪く思いながら、俺達は進む。
そして見付けた。ママ電話だ。
危うく、うわ、と声を挙げるところだった。

535 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 03:40:11 ID:8Rm6kYGVO
子供みたいなパジャマ姿のママ電話は、松の木にべったりと張り付いて小刻みに釘の頭を叩いていた。
俺がイメージしていた丑の刻参りとは違う。
ママ電話はがん、がん、がんと怨念を込めて釘を打つのではなく、こんこんこんこん、こここここ……と、
力を込めずにちょっとずつ釘を打ち、ぶつぶつぶつぶつと小声で何かを喋っている。
その声が、異様だ。怨念やら怒りがこもるような声音ではない。
何かをおねだりするような、甘ったるい声音。
成人した男であるママ電話がそんな声音で
「ね? だよね? そうだよね?」
などと呟き続けている。
怖さより、気持ち悪さを感じた。
頭がイってると思った。

536 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 03:41:08 ID:8Rm6kYGVO
「何やってんだてめえ!」
その気色悪さに堪えかねたAが飛び出してママ電話に掴み掛かったが、
あああ! と声を挙げて暴れたママ電話に振り払われて転んだ。
ヤバいと感じて俺も飛び出した。ママ電話は金槌を持っている。殴られたら洒落にならない。
しかしママ電話は金槌を捨てて逃げ出した。襲い掛かってくるものだと身構えていた俺は呆気に取られた。
「待てコラ、ボケエ!」
叫んで走り出したAにつられて俺も走り出す。
貧弱な割に足が早いAと、運動神経は悪いが体力に自信があった俺は、簡単にママ電話に追い付いた。
ママ電話は暴れたが、やがて観念したのか大人しくなった。
「何でこんなことしたんだ」
俺としてはそこが知りたかった。恨まれるような覚えはない。
陰口を叩いた事が全く無かったとは言わないが、いじめなんかはした事が無い。
「……」
ママ電話は言動があれだったが、知的障害の気は無い。おどおどとするが受け答え自体は確りしていた。
だが、そのママ電話は何も答えない。苛ついたAが彼の胸ぐらを掴む。
「おい、何とか言えよ」
それでも何も言わない。じ、と黙り込むその姿には、学校でのおどおどとした様子は欠片も見当たらない。
俯いたまま上目遣いで俺を睨む彼に、Aは舌を鳴らす。
俺の口からバカ、やめろ、という言葉が出る前にAはママ電話を睨み付けたが、すぐに彼のパジャマから手を離した。
「もういいや、行こう」
俺としては何でこんなことをしたのか聞きたかった。なぜ俺が呪われなければいけないんだ、と。
それにパジャマ姿でこんこんと釘を打っていたママ電話は明らかにおかしいというか、変質者丸出しだったし、
このまま放置するのは色々と躊躇われた。
けれどAは、
「良いから」
と言って俺の腕を引っ張る。釈然としない俺はその手を振り払ったが、強くAに言われ、渋々その場を離れた。
その間ママ電話は、ずっと上目遣いに俺を睨んでいた。
Aと一緒に松林を抜ける際に、後ろを振り返る。
ママ電話の姿はもう見えなかったが、俺の脳裏には俺を睨み続けるママ電話の姿が浮かんだ。

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  • 匿名 より:

    そんな渾名を陰で付けられたら嘸や恨むだろうな

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