洒落怖
拷問

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大陸の40度を超す真夏日だった。
背に照りつける太陽が、裸同然の格好で歩く私たちの肌を刺す。
周りには警棒を持った役人がいるため、少しでも逃げようとすれば
その場で殺されるかもしれない。役人もこの暑さで相当苛立っている。
私たちは長靴を履かされているため、足がふらつきやすく、転ばないように
必死で足元を見ながら進んでいた。
役人の足が止まったので、顔を上げると、目の前には3メートルほどの
高さがある、電信柱のような鉄柱が何本か建っていた。太陽の熱を溜め込んだ
柱の熱は、目で見ただけでも伝わってくるようだった。
役人は私たちの背中をその柱に押しつけるようにして、柱に手をまわさせて
後ろで縛った。肌が直に押しつけられた時の、凄まじい熱さと痛みで
私たちは絶叫した。全員を縛り終えると、役人は私たちを残して
そのまま立ち去った。
10~20分程は痛みに泣き叫ぶ私たちだったが、しばらくするとその声も
静かになっていった。痛みに慣れたからというより、大声で助けを求めても
誰も来るわけでもないし、声も枯れ、体力を消耗するだけなので、
ただひたすら襲ってくる痛みと苦しみに耐えることにしたのだった。

364 本当にあった怖い名無し sage 2010/05/07(金) 16:18:47 ID:9oO8Y4lP0

かんかんの太陽は、私たちの顔を照りつけ、目を細めさせると同時に
鉄製の柱に必要以上に熱を蓄えさせ、半裸状態で剥き出しの背中や足、
柱にまわされた腕を焼いていた。皮膚と密着状態にあった部分は腫れあがり
水脹れとなった部分が、痛みで踠く度に破れて、鉄柱に張り付く。
塩気を含んだ汗が流れおちるたびに、叫びそうになる。
太陽が動いているのかどうか、確かめることだけに集中する。
何故神は私たちにこの様な仕打ちをなさるのか、と心で叫ぶ。
ここに来る前、祈っていたのは妻と娘の安全無事だけだった。
しかしその家族も今頃どうなっているか分からない。
泣き叫び、枯れ果てたと思った涙が流れたような気がした。
痛みは間断なく襲ってきた。時間の感覚はもう無かった。
今苦しみに耐えている時間が一週間にも思えたし、何カ月にも思えた。
太陽の位置だけが正確な時間を知るすべだった。
大量の汗と水疱が破れて流れる液体が、長靴に溜まっていく。
溢れ出してしばらく経ったころに、役人の姿が見えた。
日も背中のほうに隠れ、辺りが青白くなってきた頃だった。
私たちを縛っていた縄を解き、鉄柱から剥がす。

366 本当にあった怖い名無し sage 2010/05/07(金) 16:42:42 ID:9oO8Y4lP0

解放感とともに、なにかが自分から剥がれ落ちる奇妙な感覚、
壮絶な痛みに襲われ、地面に崩れ落ちるように倒れた。
長靴に溜まっていた水も、勢いよくこぼれ、からからの地面に
浸み込んでいった。
これ以上立ち上がる力も残されていない筈なのに、私たちは役人に
蹴り起こされ、明日は朝9時からだ、との言葉に絶望するほかもなく、
ただ、舎に向かって歩いて行くのだった。

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