洒落怖
娘の寝言とせんとくんと九官鳥

この怖い話は約 3 分で読めます。

〒さんは娘を家の6畳の和室に座らせ、その前に九官鳥のカゴを置くと、全ての襖と窓を閉め切らせ、
その襖を封印するかのように注連縄を三重に張り巡らせました。
そして男とその妻に言いました「わしが戻るまでは何が起ころうとも、決してこの襖を開けてはならない」
「わしはこれから南地区の郵便物の配達に行ってくるでな、よいな」
そう言い残すと、さっそうとスーパーカブで走り去って行きました。

しばらく和室の前で夫婦でまんじりと座っていると、何やら襖の向こうで壁をひっかくような音がしてきます。
それが次第に大きくなってくると、今度はどすんばたんと物を畳に叩きつけるような音がしてきました。
夫婦は娘が酷いことをされていやしないかと、気が気でありません。
ご丁寧に窓にはカーテンがおろされているので、中を覗き見ることができません。

襖の前でじれったい思いで待っていると、物音といっしょに誰かの呼ぶ声が聞こえてきました。
襖に耳を寄せると、それは女の声で「ヒ○シ、ヒ○シ」と呼んでいるので、男はぞっと背筋が凍ります。

しかしすぐ後にその声をさえぎるように娘の「ママー、ママー」と泣き叫ぶ声がしてきました。
妻は「言葉が話せなかったのに、あの子が私を呼んでいる」と襖を開けようとします。

男はあわててそれを止めようとして、半狂乱になった妻と取っ組み合いになってしまい、
襖の内側と外側でどすんばたんと家中をゆるがす大騒動になってしまいました。

〒さんが戻ってきたのは5時間後のことでした。

655 娘の寝言とせんとくんと九官鳥 5/5 sage 2010/04/25(日) 08:06:17 ID:OcF0tSHH0
「今日はゆうパックが多くて難儀じゃったのう」と言いながら家に上がりこんできた〒さんは、
半死半生状態で床に伸びている夫婦を横目に襖に近づくと、注連縄を一瞥して、
「どうやらうまくいったようじゃのう」と満足げな笑みを浮かべました。
そして〒さんが破っと気を発すると、注連縄はひとりでにほどけ落ちました。

和室の中に入った〒さんが女の子を抱えて出てくると、あわてて飛び起きた夫婦は、
「ママ、ママ」と泣きじゃくる娘を抱きしめたのでした。
ところがどこからともなく「ヒ○シ、ヒ○シ」という声も聞こえてくるのです。

男がぞっとしながら声のするほうを見てみると、それは〒さんが右手に持っているカゴの中からでした。
カゴの中の九官鳥が、あの女の声で男を呼んでいるのでした。

〒さんは男をさとすように言いました。
「安心せい、わしがしっかりと引導を渡して成仏させてやる。だがこれから先はお主の心がけ次第じゃぞ」
そしてスーパーカブに乗って夕日の向こうへと走り去ってゆくのでした。
夫婦は〒さんの後姿に深々と頭を下げたのでした。

そののちに男は僧になって女の冥福を弔ったとのことです。めでたしめでたし。

この怖い話にコメントする

  • 匿名 より:

    郵便局のおっさん出た時点で読むのやめたわ

  • 「娘の寝言とせんとくんと九官鳥」と関連する話(洒落怖)

    娘の寝言とせんとくんと九官鳥
    関連ワード