洒落怖
自分自身

この怖い話は約 4 分で読めます。

ある日、リビングで寛いでいるとインターホンが鳴りました。妻に先立たれ子供もいないこの家に、来訪者を迎えるのは私しかいません。
玄関のドアを開けると、みすぼらしい格好の男が一人立っていました。うす汚れたコートを羽織り、形の崩れた帽子を深く被っており顔が見えません。
私「どちらさん?」
男「…今日で終わる」
私「は?なんです?」
男「長かった。でも今日でそれも終わりだ」
男の言う意味が全くわかりませんでした。おそらく訪ねる家を間違えているのでしょう。
私「あなたは家を間違えてませんか?ここは○○通り…」
男「○○通り1153番。間違うはずがない」
私「え、では私に何か用なんですか?」
これは気でも狂ったか、もしくは乞食の新手の物乞いだろうと思い、
私「お腹が減ってるんですか?」
男「腹?減る訳ない」
私「じゃあどこの病院から抜け出して来たのですか?」
男「…」

私「お名前と病院名を教えて下さい。なんなら私が病院まで送って差し上げますよ」
男「…」
私「どうしたんですか?なにか言ったらどうですか?」
男は俯いて黙り込んでしまいました。私はほうっておこうと思い、玄関のドアを閉めようとしました。すると、男の体が震え出したのです
私「どうされました?やっぱり救急車を呼びま…」
男「ふふっ、はは、はっはっはっ!」
男は突然大声で笑い出したのです。私は驚きながらも、これは病気だと思い、警察を呼ぶため電話のあるリビングに戻ろうとしたのです。

435 本当にあった怖い名無し sage 2010/01/20(水) 19:18:15 ID:mlhRNureO
すると、その男はいきなり私の腕を掴みました。その力は強く、私は男の方を向かされました。
男「そうさ、抜け出してきたんだよ。でも病院なんかじゃないぞ。ここからだ!」
と叫ぶと男は大きな動作で私の額を指差したのです。その時に男が羽織っていたコートと帽子が落ちました。そこに現れたのは他ならぬ「私」自身だったのです。私は訳がわからなくなりました。その時、私の頭の中でピキッと卵の殻が割れるような音がしました。
男「見ろ!俺を見ろ!お前の本当の姿をした俺を見ろ!」
私の姿をしたその男は、私が以前に着ていたのと全く同じジーンズとセーターを着ていました。
私「お前は、なんなんだ!?一体どういう事だ!」
私は酷く混乱しました。その男の服は私がかつて着ていたのと同じでしたが、全体的に薄汚れており、何よりセーターのあちこちに赤黒い染みがべったりと付着していました。再び卵の殻が割れるような音…
男「世の中の人々はあの事を忘れとしまった。お前もな。だが俺は忘れない」
私「な、何だね、あの事とは」
それを聞いた男はおどけて天を仰ぐポーズをして言いました。
男「そうだよな。お前があの事を覚えてる訳がないよな。覚えていたら俺なんか生まれなかったんだから」
私「あんた、さっきから何言っているんだ!」
男「聞きたいか?では教えてやる。俺はお前の妻を殺害した犯人だ」
私「…!!」
男「もうひとつ教えてやろう。こっちの方が大事だ。いいか、よく聞け!俺はお前だ。お前のもう一人の人格だ。今日はお前に殺される前に、お前を殺しに来た。さあ、終わりにしよう」
私の頭の中でグシャという音がしました。その瞬間、男は私の頭の中に入ってきました。そして私は全てを思い出したのです。

438 本当にあった怖い名無し 2010/01/20(水) 19:38:54 ID:mlhRNureO
5年前、私は妻を殺害しました。
同時に妻殺害の記憶や自責の念を切り離した別人格に押し付けたのです。
しかし、それも限界がきて、あの男が現れたのです。
漂泊されていく意識の中で私は全てを思い出し、そして私の全ての人格が消滅しました。

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