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Nが辺りを見回すと、50メートルほど先に簡素な木の門があるのが見えた。
門の奥には道が続いていたらしい。
「ああ、あっちか」
とNはそちらに少し歩きだして、ぎょっとして立ち止まった。
門の下に子供が座り込んでいて、じっとNの方を見ていた。
Nがいうに、皿の模様なんかにある唐子に顔が似ていた、
全体は質素な着物の子供のようにも、にやりと笑った顔の石像にも見えたそうだ。
「お地蔵さんって、あれか…?」
首を傾げつつも再び歩き出そうとしたけど、どうも気が進まない。
もう一度門の子供を見ると、Nは急に切ない気分になった。
「あの子、ひとりぼっちや。可哀相に、今すぐあっちに行って抱きしめてあげなきゃ!」
と強烈に思い、今すぐそうしなきゃいけない気持ちに駆られたそうだ。
けれど冷静な性格のNは、どうも違和感を感じて、立ち止まったまま門の向こうをじっと見た。
行ってしっかり抱きしめるか、きっぱりとこの先一歩も近付かないかどっちかだ、と思ったそうだ。
686 3/5 2009/11/06(金) 20:33:15 ID:YVT3dqap0
Nはすぐに違和感の正体に気付いた。
辺り一面の雪原だったにも関わらず、その門の向こうには一切の雪が無かったのだ。
Nが後ろのもと来た道を振り向くと、今まで無かったはずの大きなお地蔵さんが立っていて、
何人もの人が線香や花を持ってお参りしているのが見えた。
「なんだ、あっちにあるんやん」
Nは子供に背を向けると、お地蔵さんに向かって道を戻った。
途中、後ろ髪を引かれるような思いにもなったそうだが、思い切るように歩いたそうだ。
お地蔵さんの参拝の列に並ぶと、Nはまだ門の下に子供がいることを横目で確認してから、隣にいた参拝客のおばさんに話しかけた。
「あそこに子供がいるのって見えます?」
「え?子供?そんなのいないわよ?」
「ああ、やっぱり」
それでNは、今までお地蔵さんが見えなかったのは、あの子供が見えないようにしていたんだろう、と思ったそうだ。
Nはお地蔵さんにあの子供が安らかでありますようにと手を合わせ、雪の斜面を下った。
斜面を下りて雪のゾーンから出ると、係員が「お疲れさまでした」と声をかけてきた。
Nは「どうも」とか返し、ふと山を振り返り、気がついた。
この山は、死者の集まる山だ、と。
この山が実際に城の近くにある山かどうかは判断がつかないが、
ともかくそういう種の山だろうと、その時になってやっと気付いたそうだ。
ぞっとした所で、Nは目が覚めた。
うなされていて冷や汗だらだらで、真夏だったのに寒気が止まらなかったという。
687 4/5 2009/11/06(金) 20:35:48 ID:YVT3dqap0
その時、まだNは単にお盆だからそんな風にうなされたんだろうか、と考えていたそうだ。
Nは起きてから「Kさん(京都のとある神社)だ、Kさんに行こう!」となんの脈絡もなく思ったそうで、
帰省のついでに(地元は一応関西圏)お祓いのつもりでお参りに行ったそうだ。
何故Kさんだったのかは、未だにNにもわからないそうだ。
ちなみに実家に帰ってからもNは、ひっかかりつつも例の小説を書き続けていたらしい。
物音、うめき声といった怪異も、実家でも変わらず起こっていた。
