洒落怖
注連縄

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当日、大晦日の20時に付くと、叔父さんがイライラして待っていた。
叔父「おせーぞ。19時には着くって言っただろ。」
俺「ごめんごめん、松江で鯛飯食ってたらから、でも祭りは21時からだから、十分間に
合うでしょ。」
叔父「馬鹿、潔斎する時間を考えろ。」
俺は潔斎と言われて驚いた、そんなに本格的な神事なのか? 俺は慌ただしく、風呂場で
潔斎して、オヤジのお古の家紋入り羽織袴を着せられ、祭りの会場の浜まで走って向かっ
た。

892 注連縄4/6 2009/08/17(月) 09:01:28 ID:a0/zsdaQ0
浜には、やはり羽織袴の人達がいっぱいいる。この祭りは女人禁制どころか、各々の家の
家長しか参加が認められいないものらしい。時間が来たら、神主さんが海に向かって祝詞
を唱えて神様をお迎えする。後は参道を通って、境内まで神主さんを先頭に、松明に照ら
されてぞろぞろと行列。神様を社殿に鎮座させた後は、能や神楽等が催されて、一晩中、
飲めや踊れやの大騒ぎで一晩過ごす。飲みまくるのは神人共食神事? って奴かな。

酒飲んで良い気分になってふらふらしてきた頃、社殿をぼーと見てたら、なんだかおかし
い事に気付いた。注連縄なんだけど、左が本、右が末になってる。つまり、逆に付けられ
てんだよね。なんだこりゃ、と思いつつも酔ってたから、余り深く考えなかった。

次の日、なんとなく気になって、叔父に注連縄の事を尋ねてみた。
俺「ねえ、神社だけどさ、注連縄逆じゃない。」
叔父「なに、お前、そんな事も知らずに祭りに参加してたのか。」
俺「だって、オヤジも教えてくれる前に死んじゃったし、おっちゃんも教えてくれてない
でしょ。」

893 注連縄5/6 2009/08/17(月) 09:02:12 ID:a0/zsdaQ0
叔父「そうか……、すまんな、じゃあ、きちんと説明しておくか。」
俺「頼むよ。」
叔父「あの神社なあ、神明社で天照大御神を祭ってある事になってるけど、実は違う。ご
祭神はもっと恐ろしい物だ。」
俺「えっ、そうなの。」
叔父「明治時代に、各地の神社の神様が調査されたんだけど、役人がこの土地に来た時、
単に土地の者は、神様って呼んでただけで、神様の名前は知らなかった。何しろ昔の人間
は神様の名前なんて、恐れ多くて知ろうともしなかったし、興味もなかった。それで、役
人が適当に神明社ってことにしたらしい。こうやって、各地の無名の神様が記紀神話の神
様と結びつけられてったんだな。」
俺「じゃあ、何の神様か解んないんだ。」
叔父「いや、名前が解らんだけで、どんな神様かは解る。お前、御霊信仰って知ってるか。」
俺「知ってる。祟り神とか、怨霊をお祀りして鎮めることで、良い神様に転換して御利益
を得るやつでしょ。上御霊神社とか天神様とか。……まさか。」
叔父「そうだよ。海は異海と繋がってるって言われるだろ、だから、良くない物が時々海
からやってきてしまう。特にここら辺は地形のせいか、潮のせいか、海からやってきた悪
霊とか悪い神様が、あの浜には溜まりやすいらしいな。それが沢山溜ると、漁に出た船が
沈んだり、町に溢れて禍をもたらしたりする。だから、溜る前にこっちから、神様をお迎
えして神社に祭る。それが祭りの意味だよ。」

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