洒落怖
おっさん

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浮腫んだ顔のおっさんが、精気のない虚ろな目で部屋の中を見ていた。

973 ほんの少し3/3 ◆BxZntdZHxQ sage 2008/04/11(金) 04:09:58 ID:HLtOgiIW0
「あああああああああああああ!」
俺は叫んで立ち上がった。
実際には、さほど声は出ていなかったかもしれない。
苦情も来なかったし、親も起きて来なかった。
我ながら馬鹿みたいだが、喉に張り付いた声を振り絞って、俺は宣言した。

「幻覚が見える!もう本気でやばい!俺は寝るっ!!!」

絵の具もパネルも放ったらかしにして、リビングもキッチンも明かりを点けたまま。
俺は自分の部屋に入ると、引き戸をぴしゃりと閉めた。
部屋の電灯も勿論点けっ放しで、ロフトベッドによじ登って毛布を被る。
俺の出す音が止むと、辺りはしんと静まり返った。
気のせいだ、徹夜続きで俺がどうかしてるんだ……。
そう思い込もうとしていた時。

「…駄目か。」

俺の部屋の戸の前で、はっきりと聞こえた。
無論父親の声ではない、知らない男の声だった。
それっきり、家の中は静かになった。

俺は結局、煌々と明るい部屋でまんじりともせず朝を迎え、
外が明るくなってからリビングをそっと覗いてみた。
勿論誰もいないし、廊下の正面の玄関は鍵が閉まっていて、チェーンも掛けてある。
ただ、リビングと廊下を仕切るドアだけが、ほんの少し開いていた。

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