一人暮らし
恐怖郵便

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僕とJが話すのを黙って聞いていたYさんが

Y「違うの。だって、みんな、死に方が違うの。調べてみたけど、心臓麻痺の人や、交通事故の人、病気の人。殺されたとかじゃないし、みんな住んでるところがバラバラなの」

僕は途方に暮れてしまいました。
今まで、そんな例は見たことも聞いたこともありません。

J「それに、ゆっくりもしてられないんだ・・・」

Jはそう言うと、Yさんに目配せをしました。
Yさんは、少しためらうと、バックから何かを取り出しました。

「・・・・!」

それを見た瞬間、僕の背中にひやっとした感覚が通りました。
いつもの、いやな感覚です。
今までそこのバックに入ってたのに、何故気が付かなかったのか、というほどの、いやな感覚。
それは、縁を黒く塗られたはがきでした。

【10月26日 2時00分 死亡】

と書かれていました。

「まさか・・・」

僕が聞くと、Yさんは頷いて、はがきの宛名面を出しました。

【K○ Y子 様】

宛名には、Yさんの名前が書かれていました。

「このはがきだけは、消えないの・・・他のはがきはみんな、どこかに行っちゃうのに、このはがきだけはずっとあるの・・・」

Yさんは、震える声でそう言いました。

「いつ来たの!?」

僕は、そのはがきのいやな感覚に、思わず声を荒げてしまいました。

Y「おとといの、夜・・・」

僕「なんで、もっと早く相談しなかったの!?こいつは、本物だよ!」

J「A!、A!ちょ、声が大きい」

僕の声に、周りがこちらに注目しているのが分かりました。
僕は中年のおっさんみたいに机にあった手拭で額を拭き

『・・・落ち着け、落ち着け・・・』

深呼吸をすると、どうすべきか考えました。
僕には、霊をどうこうする力なんてありません。
警察に行っても、まともに取り合ってもらえる内容でもないし、警察でどうこうできる内容でもありません。
しかし、話しの流れから、なにもしなければYさんは今夜、2時になにかしらの理由で死んでしまいます。

「ちょっと、待ってて」

僕はJとYさんにそう言うと、喫茶店から外に出ました。
こんな時に頼りになるのは一人しかいません。
携帯を取り出すと僕は爺ちゃんに電話し、今までのいきさつを話しました。

僕「・・・というわけなんだ。どうしよう、爺ちゃん!」

爺「ふ~む、そりゃいかんわなあ」

爺ちゃんはしばらく何か考えるように黙りこくった後

爺「あれじゃ、前に大畔(おおぐろ)の坊主に書いてもらったお札があるじゃろ。あれをポストとドアのノブ、部屋の窓という窓に貼るんじゃ。たぶんそいつは招かれ神の類じゃ。中から招かんかぎり悪さはできんはずじゃ」

僕「夜中、部屋に戻らないようにしてもダメ?」

爺「だめじゃな。外じゃ余計にいかん。四角く封ずる門がないぶん連れいかれ放題じゃ」

僕はJとYさんに先にYさんの部屋に戻るように言い、僕の家にお札を取りに戻りました。

大畔の坊さんというのは、『かんひも』の時に僕とKを祓ってくれた坊さんです。
普段は酒飲みで肉も食べるわ、嫁がいてバツイチだわ、生臭さがプンプンする坊主ですが、霊験はあらたかなようです。
僕が変なモノを見るようになってから魔よけのお札を書いて送ってくれていました。
僕は札を取ると教えられたYさんのアパートへ向かいました。
時刻は夜の8時でした

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