洒落怖
壁のシミ

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457 壁のシミ3/4 sage New! 2007/08/23(木) 03:26:05 ID:z18BM1Ot0

「止めてよ気持ち悪い!」
耐え切れなくなって叫んだ。弟は萎縮しまくってて声も出さない。
「じゃ何? この女の人はお母さんに断られたから僕らのトコに来たって言うの!? 赤ちゃんを渡しに!?」
「かもね」
あっさりと肯定しやがった。冗談じゃない。何で縁も所縁も無い女にそんなもの押し付けられなきゃいけない。
しかも母親に断られたから俺達の方に来るとは粘着質にも程がある。
得体の知れない恐怖と混乱に苛々して母親に当り散らしたが
「お昼まで待ちなさい」
壁を見つめたまま母親はそう呟くだけだった。
 
信じて昼まで待ってた俺達の前に現れたのは、近所のホームセンターで薄いベニヤ板を購入してきた親父だった。
除霊とかお札とかを予想していた幼い兄弟の期待は無残にも裏切られ、親父は久し振りの日曜大工にご機嫌な
ご様子で鼻歌交じりにベニヤを鋸で切ると、問題の壁に釘で打ち付け始めた。
所要時間15分足らずで作業は完了し、問題のシミは視覚上だけ“無かった”事にされた。
これで今日もここで寝ろと!? ベニヤ板の上からまたシミが浮き出てきたら!?
俺と弟は口々に不満を爆発させたが、俺の仕事に不満があるのか!?と親父の理不尽な鉄拳制裁で武力制圧され
泣き寝入るしかなかった。
 
結局、それから新たな何かが起こる事は無かった。
数日間は真新しいベニヤ板の向こう側に脅えて寝るどころではなかったが、2日経ち、3日経ち、何事も無い事を
確認すると急速に恐怖感は薄れ、何時しかそこにシミがあった事すら忘れたまま、俺達は数年後マイホームに
引っ越した。

458 壁のシミ4/4 sage New! 2007/08/23(木) 03:34:05 ID:z18BM1Ot0
とんとんとん。
 
もそもそとリビングで2人っきり、夕飯を食っていた俺と母親は同時に天井を見上げた。2階の俺の部屋から“足音”が
数歩分響き、消えた。
あの日以来、怪音現象は起きたり起きなかったりだ。
ただ、分かって来た事が幾つかある。
“足音”は2階にある俺の部屋の中とその周辺、そして階段の中程と限定された場所以外から聞こえない。
それともう一つ。マイホームと言っても安普請。大人が遠慮なく歩けばドスドスと鈍い音が響く。対して
“足音”は余り響かない。心なしか歩幅も狭いように思える。
子供の足音のように。
自分の考えにぞっとすると同時に、何故かあの壁のシミを思い出した。
俺達が引っ越した後、あの部屋に誰か住んでいるのだろうか。あのベニヤ板は今どうなっているだろうか。
ふと試しにアパートの話を振ってみた。母親曰く、あの部屋も既に誰かが入居しており、ベニヤ板もそのままらしい。

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