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俺はふと気付いて、タッチパネル式のリモコンの方を手に取った。
履歴を見てみた。俺がいま消した曲の前に
「ざんげの値打ちもない」
という見知らぬタイトルが入っていた。俺がドリンクバーから
帰ってきたとき、掛かっていたあの演歌みたいな曲だろう。
俺は入れてない。間違えても入れてない。俺は、そのずっと前の
履歴も遡って見てみた。すると
「ざんげの値打ちもない」
「ざんげの値打ちもない」
「ざんげの値打ちもない」
「ざんげの値打ちもない」
「ざんげの値打ちもない」
442 ざんげの値打ちもない sage 2007/07/05(木) 16:23:12 ID:oe8yNljK0
439続き
俺は部屋から出て、目の前の便所に入った。
したくもないけど個室に入った。そうしてしばらく、
今日来てすぐ、あの部屋を覗いたとき見えた
女の横顔を思い浮かべていた。
気持ちが悪い。もう、あの部屋で歌いたくない。
でもいつまでも、個室にいても仕方がないので、
まだ30分以上時間はあるが、会計を済ませてここを出ようと、
部屋に立った。ドアノブを握って、おそるおそる数センチ開いた時、
音が漏れてきた。部屋にはまた、大音量であの曲がかかっていた。
もう無理だ!と思った俺は、部屋に入らず、そのまま受付の方に
向かった。角を曲がる瞬間、ふと部屋の方を振り向いた。
扉のガラスの部分から女がこちらを見ていた。
へばりついて笑っていた。
443 ざんげの値打ちもない sage 2007/07/05(木) 16:27:50 ID:oe8yNljK0
442続き
俺は受付に行ったが、事情を説明した所で、
信じてもらえなかったらどうしようと思って、
おどおどしながら店員に「あの、14番の部屋なんですけど・・・」
と話し掛けると、店員は何か察知したように、すぐに俺の言葉を遮った。
「あ、分かりました、分かりました。大丈夫です。部屋、お替えになりますか?」
「いや、もう帰ります」
すると店員は、他のバイトの子と、目配せをして、あの部屋まで
俺の荷物を取りに行ってくれた。手慣れた風だった。
金を払おうとすると、「今日は、料金は結構です」と言われた。
俺の話は以上。
聴いてくれた人ありがとう。
俺に言えるのは、カラオケは、なるたけひとりで行くな、ということだ。