洒落怖
曖昧な記憶

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229 名前: 223 2006/07/27(木) 11:11:47 ID:ja8/AXvJ0
当時、携帯というものはまだ限られたビジネスマンが車の中でだけ使う高価なもので、
普及していたのはポケベルとPHS。今の若い方々は知らない方も多いかもしれません。
基本はポケベルで、中にはピッチPHSを持って、ベルと共用している人もいる、そんな時代です。
数字だけが入るポケベルから進化して、その当時は短いカタカナを送ることができました。
街の公衆電話では、女子高生が高速でメッセージを打ちまくる光景をよく目にしました。
11はア、15はオ、21はカ、といった具合に入れるのです。
川原で飲んでいた6人もそれぞれポケベルやPHSを持っていました。

231 名前: 223 2006/07/27(木) 11:12:23 ID:ja8/AXvJ0
皆が談笑しているとき、M先輩のポケベルが鳴り出しました。
他の皆は大して気にすることもなく、話を続けていると、
「あれ?誰やろ…」
M先輩が言いました。
「どうしたんすか?」
誰かが尋ねると、M先輩が自分のポケベルを私たちに見せてくれました。
【ドコニイルノ】
それを見た誰かが冷やかします。
「またぁ~、誰やろって、それはオレらが聞きたいですよ~」
とニヤニヤして言います。

232 名前: 223 2006/07/27(木) 11:13:00 ID:ja8/AXvJ0
「いや、ホンマ心当たりないし!」
とM先輩が言った瞬間、手に持ってこちらに見せていたベルが再び鳴りました。
確認するM先輩。
訝しげな表情を浮かべ、私たちに見せます。
【ワタシモイレテ】
「どこって聞いておいて、入れてって何やねん。意味分からんわ」
とM先輩。
「彼女ちゃうんすか?」
「いや、彼女おらんのん知ってるやろ」
その時は大して気にも留めず、また雑談を再開しました。
数分して、また鳴るM先輩のポケベル。
「もぉ~~~誰やね~ん…」
と、また私たちに見せてくれたベルには
【ナイノ】
と。
全員「はぁ~?」と苦笑していました。

233 名前: 223 2006/07/27(木) 11:14:08 ID:ja8/AXvJ0
すると、今度もすかさずもう一度ベルが鳴り、
【ドコニアルノ】
「どこにいる、の次はどこにある、か…」
M先輩はわけが分からない様子で、呆れて鼻で笑っていました。
ところが、ポケットにしまいかけた時、また鳴ったベルを見たM先輩は一気に青ざめたのです。
「…次はなんすか?」
「…どうしたんです?」
興味津々に聞く私たちに、M先輩は何も言わずにベルを見せてくれました。
【ワタシノアタマガナイノ】
と、ありました。

234 名前: 223 2006/07/27(木) 11:14:48 ID:ja8/AXvJ0
皆に見せた後、M先輩はいきなり怒り出しました。
「ちょ、お前ら。オレが霊感強くてこういう冗談いっちばん嫌いなん知ってるやろ!」
驚く私たち5人。
「誰やねん!こんなふざけたん入れたヤツ。ちょーもうええし、ホンマやめろや」
まで言った時、またベルが鳴りました。
M先輩の真剣さと、もしかして霊的なことなのかという驚きで5人も押し黙ってM先輩が確認する様子を見守ります。
確認したM先輩は「ハッ」とひきつった笑いをすると、M先輩はまた見せてくれました。
【アソボウヨ】
見せながら「誰や」とM先輩は問い質します。
「お前ら、ピッチ(PHSのこと)持ってるやろ。それでこれを入れてるん分かってんねん」
そう言うと「とりあえず全員ピッチここ出せ。発信履歴見るわ」と言い出しました。
PHSからメッセージを送るには、メッセージセンターに電話を掛けなければいけないので、
発信履歴を見ると確認できるのです。
「オレちゃいますよ…」と皆口々に言いながら、砂利の上にPHSを出していきます。

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