洒落怖
番人

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不意に、誰かに話しかけられた。

63 (4/5) sage New! 2013/11/04(月) 23:20:02.33 ID:BT1miYvr0
声の主は、白い服を身に纏った老人だった。
廃屋には小さなテラスがあり、そこの椅子に腰をかけているようだった。

「この先は行ったらあかん」
老人はそう繰り返していたので、どうやらこの道の先に行かせたくないようだ。
私有地なのかな?そんな事を考えながら、
「あーすんません、僕ら●●神社に行ける道を探してるんですよ。
 おじーさん、知らないですか?」
そう尋ねた。
繰り返しになるが、この時の俺は、特に恐怖心は感じていなかった。

「あっちやで」
老人が指差したのは、俺らが先ほど無視して進んだ、
道ともいえない細い山道の一つだった。

あそこから行くのか…。そう思いながら、
「ありがとうございます~」
老人に礼を行って、俺らはそっちの道を進むことにした。

64 (5/5) sage New! 2013/11/04(月) 23:26:41.02 ID:BT1miYvr0
生い茂る草木を割って山道に入った瞬間、背筋に戦慄が走った。

視界に飛び込んできたのは、おびただしい量の経文だった。

紙いっぱいに書かれた理解不能な言葉、その経文紙が大小入り交じって
幾つも連なり、山道の脇という脇を埋め尽くしていた。
経文を縁取った赤と青の不気味な配色は夜の闇に融け、
その毒々しさを際立たせている。

言葉を失う二人。
山道は確かに麓へと続いていそうだが…

ヤバい。これはヤバい。
降りていったら絶対帰ってこれない。
ここに来て初めて恐怖を自覚した俺。

二人して、慌てて元の道へ戻る。
廃屋の方へ目をやったが、さっきまでいた老人が何処にもいない。
そんな馬鹿な…、帰ったのか?一体どこへ?廃屋の中へか?
そもそもあの老人は一体なんだったんだ?
人間だったのか?それとも…

そんなことを考えながら、全速力で車に戻って一息つく。

…まぁ多分あれは人間だろう、そしてきっと、あーいうのを霊だと勘違いして、
みんな心霊心霊と騒いでいるんだろう、そんな結論に達した。
というか、怖すぎてそういう理由でしか自分を納得させられなかった。

その後、皆でS塚へ行く計画は頓挫したため、もう行くことはなくなった。
だけど、あの異常な経文は何だったのだろう。そしてあの老人は。
もう二度と行くことはないだろうし、今さら調べることもないだろうから、
今となっては分からない話だ。

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