洒落怖

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暫く景色を眺めていた叔父は、ふと、併走していたバンに小さな女の子が乗っているのに気がついた。
ぼんやりとその女の子を眺めていた叔父だったが、女の子の方も叔父に気付いたらしく、初めは恥ずかしそうに、その内徐々に叔父に笑顔を向けた。
叔父も笑顔を返しながら、家族で旅行にでも行っているのだろうと、ほんわかした気持ちでその女の子を眺め続けていた。
すると、すっかりはしゃぎ始めた女の子は窓ガラスにくっつくように身を寄せると、その小さな手を叔父に千切れんばかりに振りはじめた。
気をよくした叔父が手を振りかえそうと思った瞬間、

「やりやがったっ!!」

運転していたドライバーが、突然怒声を上げて急ブレーキを踏んだ。

781 本当にあった怖い名無し sage 2014/02/13(木) 00:44:02.49 ID:g5d/fSPO0
叔父が慌てて前を向くと、そこには雪にタイヤを盗られて高速道路を斜めに滑っている大型トラックの姿が目に入ってきた。

叔父の乗ったトラックも焦って急ブレーキを踏んだせいで徐々に車体が横を向いていき、徐々にフロントガラスに近づいてくるアスファルトを見て、叔父は自分たちのトラックが横転しそうな事を理解した。
慌ててシートベルトを強く握って衝撃に備えた叔父の目に、同じように雪に滑って横向きに滑る女の子の乗った車の様子が飛び込んできた。

女の子は横向きで進む車の窓ガラスに押しつけられ、かわいらしかった顔を化け物のように歪めてガラスに張り付いていた。
やがて滑る事を堪えられなくなった女の子の車は、今度は車体をアスファルトに叩き付けるように横に回転し始めた。
回転し女の子が押しつけられた側が地面に叩き付けられる度に、そのこの顔酷く潰れ、車内に血が飛び散る様子が、
叔父の目にはハイスピードカメラで撮った映像のようにゆっくりと見えていた。

その後、結局叔父の乗ったトラックもそのまま横転し、叔父はその凄まじい衝撃で気を失った。

782 本当にあった怖い名無し sage 2014/02/13(木) 00:45:31.50 ID:g5d/fSPO0
目覚めると叔父は病院のベットにおり、そのまま暫く入院する事になった。
見舞いに来た上司の話によると、叔父に手を振っていた女の子は、アスファルトに叩き付けられた衝撃で、原型を止めない姿になってなくなったらしいと叔父は聞かされた。

その後叔父は会社を辞め、進んでいた大型トラックの免許の講習も中断して別の会社に就職した。
その時の窓ガラスに押しつけられた女の子の姿が忘れられず、結婚して子供が出来た時、生まれてきた子が女の子だったらと思うだけで強い恐怖感を抱くようになり、結局、生涯独身のままその人生を全うした。

叔父曰わく、それ以来、子供の掌を見るとあの時の光景がフラッシュバックしてしまい、怖くて仕方がないと言っていた。

血にまみれ真っ赤に染まった車の回転する度に砕けていく女の子が張り付いた窓ガラスで、その子の小さな掌だけが白かったんだよ。

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