子どものころの怖い話
怒号

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喉が渇いた旨をターちゃんに伝えると、ターちゃんも同様であった。
帰るか、と思ったその時、目に入ったものがある。

パン屋のトラックの荷台(コンテナ)?である。
これ自体田舎では別に驚くようなものではない。
払い下げのコンテナを農家のおっちゃんが倉庫用として使用していることはよくある。
ただ、この松林の奥にあることが意外だった。

161 お邪魔します sage 2008/08/12(火) 02:40:18 ID:dGA/L48T0
コンテナの中を開けるとそこには…ということは無かった。
開ける勇気もなくそこを去ってしまったからである。
コンテナに描かれたパン屋のキャラクターが赤錆びていて不気味で、
急に心細くなってしまったのだ。

来るときよりも早足で俺たちは来た道を戻った。
つもりだったが、来る時に斜めに進んだのがいけなかったのかもしれない。見事に迷った。
基地を作った当初に俺が書いた「秘密基地の地図(社外秘)」をあわてて取り出すが、
今日来た道は初めての道。クソの役にも立たなかった。立ち止まって考え込む俺ら。
とそこに、

「なんしょんやわらああああああ!!」

ただでさえ焦りを感じだした俺達の心臓を握りつぶさんばかりの怒号!

スニーカーターちゃんは脱兎。サンダル俺はもつれてこけた。
ターちゃんのTシャツの背中が軽やかにひらめくのをやたら鮮明に覚えている。

162 お邪魔します sage 2008/08/12(火) 02:41:18 ID:dGA/L48T0
「なああああああああああ!!!1」俺はすべてが終わるのを感じて吠えた。

「わら何しちょっとかあああ!!!」オッサンも吠える。
俺に近づくオッサンの手に鎌!鎌て!ああもうマンガみたい!

「ああああすんませんでしたああああああぇえええええん」
もうなんだかよくわかんないまま謝罪する俺。もう泣くしかない。

「わら何しちょったか!!」オッサンが問う。
「何もぉぉぉ もう帰りたいですうううう」俺が答える。
2往復くらいこのやり取りをやったところでようやく事態が落ち着いてきた。

オッサンはどうやら松林の奥で何か農作業をしているとのこと。
ちょこちょこ聞き取れない上、目つきも言動も風貌も怖かったし、
まあ、こんなところにいる時点で普通の人ではなかっただろう。

「学校に帰りたいですううぅ」
「迷ったんか馬鹿タレが!」オッサンは俺を罵りながら手に持った鎌で、ある方向を指した。

163 お邪魔します sage 2008/08/12(火) 02:42:45 ID:dGA/L48T0
「あっちに真っすぐや」

俺は正直ビビった。あっちはあきらかに俺たちが「今」通ってきた方向。
少なくとも学校側であるはずがない。どっちかというと松林の奥側のはずだ。
『えっ』と思ったが、オッサンは「あっちや」と静かに言う。

ようやくターちゃんが戻ってきた。
オッサンは「お前も迷ったか。あっちや。あっち行ってみろ」と続ける。

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