中国・朝鮮
赤と青の炎

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554 赤と青の炎 ◆cmuuOjbHnQ sage 2007/12/03(月) 06:08:55 ID:SMU8HFLJ0
修行が進み、俺の気が満ちてくると意識して跳ね除ければ魍魎を遠ざける事が出来るようになった。
さらに、抜け落ちた毛が伸び始めてどうにか人前に出られる位になった頃には、気が貯まり、溢れ出る気によって魍魎が遠ざけられ、夜でも眠る事が出来るようになった。
俺達の修行がある程度進み、マサさんが何日か「結界の地」を留守にしても大丈夫になった頃、マサさんの目を盗んで俺は例の「井戸」を見てしまった。
井戸を塞ぐ黒い石から青い鬼火のようなものが立ち上るのが見え、井戸の中に魍魎や何か嫌な「気」が吸い込まれているのが「見えた」。
誘蛾灯に引き寄せられる虫のように、冷たい美しさのある青い鬼火に魅入られていると、井戸の方から視線を感じ背中に寒気が走った。
次の瞬間、青い鬼火は血のように赤く暗い炎に変わった。
青い鬼火からは嘆きや悲しみ、或いは絶望といった印象を受けた。
しかし、赤い炎からは怒りや憎悪、そして殺意が感じられた。
俺は、見てはならない物を見てしまったことを激しく後悔した。
思えば、あの井戸を凝視してしまった時から俺は「異界」に足を踏み込んでしまったのかもしれない。

555 赤と青の炎 ◆cmuuOjbHnQ sage 2007/12/03(月) 06:10:12 ID:SMU8HFLJ0
井戸から強烈な殺意を感じて、俺はそのとき一つの疑問を持った。
あの井戸は何の為に作られたのか。
何年もマサさんと行動を共にし、マサさんがあの井戸に悪霊や呪詛等を送り込むのを何度も目にする内に、その疑問は強くなっていった。
マサさんは普通の祓いも出来るのに、何故、危険な「井戸の呪法」に拘るのか?
アリサからジュリーの死を聞かされた晩、俺はアリサと体を重ねながら考えていた。
ジュリーの命を奪い、姜家を断絶に追いやったのは、結局マサさんの施した「井戸の呪法」だったのではないか?
マサさん絡みのクライアントで、ジュリーのように結局助からなかった者は少なくないのだ。
後に俺はその理由を聞かされたのだが、その話は機会があれば語りたいと思う。

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