エレベーター・密室
エレベーター

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Aはエレベーターホールにはいませんでした。
エレベーターを見ると1階に。
『Aが私を驚かそうとしてどこかに隠れているのかな?』
と思い、一応4階を見回ったのですが、何処にもいませんでした。
『先に3階を見に行ったのかな?』
とエレベーターを呼び、乗り込むとAの携帯がエレベーターの中に落ちていました。
『Aの奴帰ったのか?』
と思い、私一人で 残り3フロアを見回りました。

『終わったー疲れたーもう帰ろう――』
このとき重要な事を思い出し脱力しました。
この場所には会社の車で来たのですが、運転はAが、私に至ってはバイクなら運転できるのですが車は運転出来ない。
『これじゃあ帰れないじゃないかー』
と思い外に出ると、案の定会社の車はそこにありませんでした。
仕方なく私は歩いて会社へ戻りました。

その日、Aは私を置いて会社へ帰り、そのまま仕事を辞めてしまったそうです。
会社の人は私に
「もう帰っていいよ」
と言いました。
何か釈然としないものを感じましたが、臨時収入をその場で渡されたので
『まぁいいか』
と結局そんなふうに思ってしまいました。
制服を仕舞う時、ポケットの中にAの携帯が・・・
返すの忘れてたのを思い出しました。
忘れてたというのか会えなかったってのがホントの所なんですが・・・
Aは自宅に電話を引いてないので、
『携帯がなきゃ大変かな?』
なんて思い、文句ついでに届けてやろうと新聞配達後Aの自宅へ行きました。

Aの家はかなりボロいアパートの二階の階段前。
『寝てるけどいいよね』
とチャイムを押しましたが出てくる気配なし。
『何回も押すと近所迷惑だろうなぁ』
と思ったので、夕方にでも来てみようと私は家に帰って寝ました。

――私は電子音で叩き起こされました。
時計を見ると7:30。鳴っているのはAの携帯でした。
仕方なく私が出ると、電話相手はAの母親でした。
Aが家にいないそうなので、まだ眠かったのですが
『Aの母親に携帯を渡せばいいか』
と思い、またAのアパートに行きました。

チャイムを押すとすぐにAの母親が出てきました。
ドアの隙間からAの部屋の中がチラッと見えたのですが、変な柄の壁紙が張ってありました。
私は携帯を渡してそのまま帰るつもりだったのですが、誰かが階段を登ってくる音が聞こえると、Aの母親は
「ここじゃなんだから」
と私を部屋に入れドアを閉めたのです。

中に入った時、私の顔は真っ青だったと思います。
それは、その変な柄の壁紙・・・は、壁紙だったのではなく、指から血が出ても壁紙をかきむしり続けた・・・
そんな痕だったからです。
それが、壁一面にあったのです。
Aの母親は
「ペンキでも塗らないとダメね」
と雑巾でこすりながら苦笑しました。
Aの母親の話では、Aはあの仕事中
「人を殺してしまった」
とAの母親に電話を入れたそうですが、途中で叫び声と共に電話が切れてしまったそうです。
その後何度電話しても話し中で、父親と話し合い、彼の母親が始発電車でAの所へ来たそうです。
そして管理人さんに電話を借りてAの携帯へ電話したそうなのです。
それを、僕がとったというわけです。
あいにくAの部屋の両隣は留守で、中で何があったかは分からないのだと言っていました。

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