田舎・地方の習慣
鍾乳洞

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「うわー、すっげー!! ゲームみたいだ!!」

そんな風に歓声を上げた少年に対して俺達は少しだけ得意になった。
少年に奥に行けばプールみたいになっている事を伝えると、持ってきていた水着に着替えて青く光るプールに飛び込んで行った。
そこに俺達も混ざり、その時は学校のプールのように水を掛け合ったりしながら、時間を忘れてはしゃいだのだった。

しばらく皆で楽しく遊んだあと、小腹が空いてしまったので少年とCを残して家までおやつを取りに行く事となった。
一度家に戻り、全員が揃ったのはそれから20分程経った頃だったと思う。俺はお菓子と一緒にカルピスを水筒に詰めてA・Bと合流した。
そして、三人で一緒に件の鍾乳洞に戻ってみると、そこにいるはずのCと少年が消えてしまっていた。
初めはCと少年がふざけて隠れているものとばかり考えていた俺達は、岩の後ろや、奥に続く穴をのぞき込んだりもしたのだが二人の気配すら感じられない。
いよいよヤバいんじゃないかと俺達が焦りを覚え始めた頃に、先ほどまで俺達が泳いでいた湖面から細かい泡がブクブクと浮き上がってきていることに気付いた。
他の二人も俺の視線を追ってその泡に気付いたようで、無言でジッとその泡を見つめる。
皆無言のまましばらくその泡を見つめていると、徐々に泡は小さくなりやがて消えていった。

874 4 sage New! 2011/08/17(水) 19:34:03.09 ID:Y9ByGQbH0
「(一体なんだったんだ?)」

他の二人とアイコンタクトを交わす。
と、先ほど泡が吹き出していた場所から、サッカーボールのような半円の物体が音もなく浮かんできた。
一瞬凍りついた俺達だったが、すぐにそれがサッカーボールなどではなく子どもの頭だと分った。
それも、見覚えのあるあの長髪は間違いなく都会から来たあの少年だ。

A「おい、○○君! 大丈夫か!?」
B「Cが居ないんだ! 何か知らないか?」
俺「取りあえずこっちに来いよ!」

そんな風に俺達はその少年らしきモノに向かって話しかけるが、水に浮かんだその頭はなかなか俺達の方を見ようとしない。
そこで業を煮やしたAが「おい、お前無視すんなよ!」と声をあげて、水面に浮かんだ頭に向かって小さな石を投げた。
「ちょっと待て!」「お前何してんだよ!!」石を投げる直前に、俺とBがAを諌めたが、Aを止める事は出来ず、石は真っ直ぐにソレに向かい小さな音を立てて水面に落ちた。
幸い、その石が彼の頭に当たる事はなかったのだが、かなり近くに落ちたせいで跳ねた水が掛かってしまった。

B「危ないだろ!」
俺「当たったらどうすんだよ!?」

俺達がAに詰め寄ると、Aは憮然とした様子で「だって……」とか呟いていた。
そんなAから目を離し、ふと水面の方を見やると、そこにあったはずの頭がいつの間にか消えている。

875 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/08/17(水) 19:35:43.52 ID:Y9ByGQbH0
「ちょっと……!」俺が叫び出そうとした瞬間、
奥に続く細い鍾乳洞の通路から「ガボ… ガボ……」と濡れた長靴を履いたまま歩くような音が洞窟の壁に反響しながら聞こえて来た。
それは小さな音だったので、言い合いをしているAとBはまだ気付いていない。
どういうわけか音の聞こえる奥の暗い穴から目が離せず、無意識にじりじりと後退する。
そこにきてようやくAとBも俺のただならぬ様子に気付いたようで、まるで抱き合うようにして音のする方へと顔を向けた。
奥に続く道からはなおも「ガボ… ガボ……」という不気味な音が定期的に続き、徐々に近づいてきているのか音も比例して大きくなってきた。
叫び声をあげて逃げ出したい気持ちも多分にあったが、なんとなく大きな音をあげるのはマズイような気がしてままならない。
そして気がつくと、俺達三人は水際に追い込まれてしまっていた。
「ガボ… ガボ……」という音はなおも近づいてくる。と、その時水にぬれた岩に足を取られてBが尻もちをついた。
それでハッと我に返った俺達は誰ともなしに「早く逃げろ!!」と叫び、不気味な音がする奥の穴とは反対の、出口に繋がる穴へと全力で駆けだした。
わき目もふらず無我夢中で走り、出口まであと少し。
そこで俺達は三度目の衝撃を受ける事となった。

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