犬・猫、動物
拾った携帯

この怖い話は約 3 分で読めます。

778 駄文失礼します。4 sage New! 2010/07/13(火) 02:06:39 ID:IbYX1T4R0
帰ってくると、夜でした。私は夕食を作り、風呂に入ったあと、ふと忘れていたことに気づいて、靴箱の上のその携帯をとりました。
そして、買い物袋から充電器を取り出すと、コンセントに繋ぎました。
そうして、充電器に繋ぎ、紅いライトが灯った時の喜びは、何とも形容しがたい物でした。
独善的ではありますが、誰かを少しでも救えるのだという確信が、脳髄を痺れさせるような喜びを湧きおこし、
とてつもない善行を行ったような高揚感が訪れました。つまり、きっと私は幼かったのです。
だから、この携帯を自分の手で落とし主に渡したいと思ったのでしょう。
その裏には、警察などを通さず、ただ自分の身が賞賛され感謝されたい、そんな欲望がありました。
今感じた様な喜びと高揚感を、落とし主の感謝の言葉とともに感じたいと言う様な、そんな欲があったのです。
私は無心で、紅いライトを灯した携帯を開きます。
ライトを塞ぐように添えた右の人差し指が赤くなって、血の様だと思ったのを今でも思い出します、
親指に力を込め電源のボタンを押したのを覚えています、左手をディスプレイに添えていたのを覚えていますし、
起動までの十数秒が長く感じたのを覚えています。
そして、電源が付いた跡の、全身の皮膚が粟立つような感覚を、こうして書いている間も、ありありと感じます。
今ではデスクトップと呼ばれるべき場所に浮かんだ、未送信メール数が異常でした、発信電話数も異常でしたし、電波の三本線がゆっくりと回復した瞬間、私の掌を飛び出し、床で震動し始めたそれに舞い込む着信メール数と着信電話数も異常でした。

779 駄文失礼します。6 sage New! 2010/07/13(火) 02:08:55 ID:IbYX1T4R0
それらは恐らく、表示件数の限界を軽く超えていたのでしょう、私は周りを見渡しました。
何も居ないのです、動いているのは床の異常な携帯だけなのです、音を立てているのも床の携帯だけなのです。
それでも、私は何かが床をガリガリと引掻く音を聞きました。
しばらくして、それはとまりました。
静寂の中で、私は放心したように自分の携帯を取り出します、パニックのまま110番を押しました。
呼び出し音が自分の携帯から聞こえます、しかし、普通ならば即座に出るはずの警察の方は全く出ないのです。
ただ呼び出し音が耳元で響くだけです。
そして、床の携帯が、また動き始めました。電話の着信を告げているです。
その携帯が、ヴー、ヴーと、床を擦るのです。私にはそれがゆっくりとこちらに近づいてくるような錯覚さえ覚えました。
いえ、きっとそれはゆっくりこちらに近づいて来ているのです、たゆんでいたはずの充電ケーブルが伸びきり、かつん、と音を立て外れました。
部屋全体が揺れているのではと思うような中、私の掌の中の携帯は未だ間抜けな呼び出し音のままなのです。
私は自分の携帯から、今目の前の携帯に電話をかけているのかと、そう疑う様な状況でした。
しかし、自分の携帯のディスプレイを確認するのはできませんでした。
私の双眸は、目の前をのたうち、生き物のようにゆっくりと近づいてくる電子機器に釘付けでした。
一瞬目を離した瞬間に、ソレが私の目の前に来ているのではないかと、
そして、今真後ろに、きっといつか友人皆が見ていたようなモノが、存在しているのでは無いかと、私は金縛りにあった様に立ちすくんでいました

この怖い話にコメントする

拾った携帯