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呪い

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667 クリッパ- sage New! 2006/10/29(日) 19:59:26 ID:A+4164hu0
結局、風は死んでからその約束を守ってくれた事になる。
俺はその道祖神の写真、人型に黒く削られた部分を見つめていた。
「やっぱりその、道祖神の呪いですかね」
神が罰を当てたのか、それとも神が封じていた何かが風の一家に障ったのだろうか。
「さあな 写真からじゃわからんよ」
「妹さんの言っていた『黒い影に落とされた』みたいな証言ともつながって来ますよね」
俺には黒い霧の様なものに包まれてパニックした風が過ってベランダから落ちるイメージができあがっている。

「神様なんかより人間さまの方が恐ろしいと思うんだよなぁ」
師匠は独り言の様にポツリ、と言った。
「・・・歩く、どう思う?」
「えー?」歩くさんは話だけ聞きながら、写真には興味もない様子で肴をつつきビールを飲んでいる。
「特に何も見えないよなぁ」
「うーん 見えないねぇ」
歩くさんはちらりと見ただけで師匠に同意してみせた。この人は酒なんだ。酒と肴だ。
歩くさんの食べっぷりを見て腹が減ってきた俺は、恐縮してみせながらもカラアゲとタダ酒で腹を満たす事ができた。
それで俺は早々に帰る事にした。
歩くさんが来ているのに師匠の汚くて狭い部屋で酔いつぶれて寝るわけにはいかない。
すると師匠が俺の上着を指差して
「ちょっとその写真貸しといてくれ」
「だって何にもないんでしょ? どうするんですか?」
「まあ いいから貸してくれよ」
思惑ありげな顔で手を出す師匠に写真を封筒ごとわたして、俺は帰る事にした。
俺は自分の大人の配慮に自己満足しながら居酒屋を出ると酔った足取りでふらふらと家に帰った。

師匠から電話で叩き起されたのは朝5時だった。

668 クリッパ- sage New! 2006/10/29(日) 20:01:00 ID:A+4164hu0
師匠から電話で叩き起されたのは朝5時だった。
「なんですか!うー 朝っぱらから もう!」
昨夜はご馳走様ですの挨拶も忘れ、怒気をはらんで非難めいたうめき声を出す
俺におかまいなしに師匠は話し始めた。
「あれな・・・お姉さんだそうだ」
「は?」
「歩くが全部見た」
「え?」
歩くさんのエドガーケイシーみたいな能力については前に聞いた事がある。
師匠は寝付いた歩くさんの枕の下に写真をもぐりこませたのだ。
「例の友達の写真・・・あれな、あの姉さんの呪い・・と言うより生霊だな」
「ええ!?」
「だから黒い影だよ 道祖神なんかじゃない。 姉さんの生霊だそうだ」
「なんで・・・」
「親父さんが倒れたのは単なる脳梗塞で、それから後は遺産争いだそうだ。
土地の実力者で土建屋って言うと相当の金持ちだろう?」
「・・・・・」言葉もなかった。痩せてしまった薄い笑顔を思い出した・・・あの梓さんが?
「お前の友達が落とされたのか、落ちたのかはわからない、
ただ姉さんの生霊が取り付いて悪さしてたのは間違いないそうだ」
俺が黙っていると
「おーいて 歩くに本気で殴られたぞ 写真の女が髪を振り乱して目を
ギラギラにさせて家の中を走りまわるシーンを見て、相当怖かったらしい」
師匠らしいやり方だな、と思ったらそれで俺も笑いが出てふっと力が抜けた。
「だから言っただろ、人間さまの方が恐ろしいんだよ」
師匠はそれだけ言って切ってしまった。途方に暮れる俺に朝が静かに明けてきていた。

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