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葬祭
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455 葬祭 ラスト ウニ New! 2006/06/03(土) 12:45:29 ID:3rNkYIQb0
ところが、違う違うとばかりに師匠は首を振った。
「順序が違う。あの箱の中にはすべて生まれたばかりの赤ん坊が入っ
ていた。年寄りが死んだときに、都合よく望まれない赤子が生まれ
て来るってのは変だと思わないか。逆なんだよ。望まれない赤子が
生まれて来たから年寄りが死んだんだよ」
婉曲な表現をしていたが、ようするに積極的な姥捨てなのだった。
嫌な感じだ。やはりグロテスクだった。
「この二つの葬儀を同時に行なわなければならない理由はよくわか
らない。ただ来し方の口を減らすからには行く末の口も減らさなく
てはならない、そんな道理があそこにはあったような気がする」
どうして死体となった年寄りの体から、それが出てきたような形を
とるのか、それはわからない。
ただただ深い土着の習俗の闇を覗いている気がした。
「そうそう、その葬祭をつかさどっていたキの一族だけどね、まるで
完全に血筋が絶えてしまったような言い方をしちゃったけど、そう
じゃないんだ。最後の当主が死んだあと、その娘の一人が集落の
一戸に嫁いでいる」
そういう師匠は、今までに何度もみせた、『人間の闇』に触れた時の
ような得体の知れない喜びを顔に浮かべた。
「それがあの僕らが逗留したあの家だよ。つまり・・・」
ぼくのなかにも
そう言うように師匠は自分の胸を指差した。