師匠シリーズ

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503 声 ラスト  ◆oJUBn2VTGE ウニ New! 2007/01/28(日) 12:33:34 ID:STrJj++Q0
中途半端な位置で止まった頭の、その視線の端で彼女が壁際に立っているのが
見える。
しかしその姿が、薄闇の中に混じるように希薄になって行き、俺の視界の中で
音も無く、さっきまで人だったものが、「気配」になって行こうとしていた。
ドアの向こうの闇から、なにか目に見えない手のようなものが伸びてくるイメー
ジが頭に浮かび、俺はドアノブから手を離して逃げた。
背後でドアが閉じる音が聞こえ、彼女の気配がその中へ消えていったような気
がした。

自分の部室に戻ると、みんなさっきと同じ格好で同じことをしていた。
胸を押さえて座り込むと、師匠が薄目を開けて「無視しろって言ったのに」と呟
いてまた寝はじめた。マリオはタイムオーバーで死んでいた。
その後、ときどきあのサークル棟の端の一角を気にして、通りすがりに廊下から
覗き込むことがあった。
昼間は何事もないが、ひとけのない夜には、あのドアの前のあたりに人影のよう
なものを見ることがあった。
しかし大学を卒業するまでもう二度と近づくことはなかった。

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