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古い鏡

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608 名前:zom 投稿日:03/05/06 17:19
「スゴイ量だよな。この破片。」
 破片を手にとって見ると、古い鏡のように黄色や茶色のサビが入っています。
どれもこれも曇っていてハッキリと映りません。
「あれ?これ割れてねーぞ。」
 清水がそう言って、部屋の隅に懐中電灯を向けました。そこに鏡が置いてあ
りました。古そうな丸鏡でなぜか木の台の上に置かれていました。それが懐中
電灯の光を反射して清水の顔を照らしています。俺はその時、猛烈にイヤな感
じがしました。

「清水。もうやめようぜ。」
 原田も同じことを思ったのか、清水の方に向かって声をかけました。清水は
返事をしません。鏡からの光がゆらゆらと揺れて、清水の顔がまだら模様に見
えました。俺はなぜかその光景を見ていられなくなって目を背けました。
「おいっ清水、もうやめろって!」
 原田が後ろから清水の体を掴んで揺さぶっているようです。
「んーーー。んーーー。」
 後ろから変なうなり声が聞こえてきました。堪らなくなった俺は外へ逃げよ
うとしました。戸口は目の前です。逆光で石川の姿がシルエットになっている
そこを目指して走ろうとするのですが、膝のあたりがガクガクして足が上手く
動かせません。悪夢の中を逃げているような感じでした。

609 名前:zom 投稿日:03/05/06 17:21
「んーーーんーーーーーーんーーーーー」
「おい!誰か手伝え!清水がおかしいんだって!」
 原田が叫んでいるのが聞こえましたが、俺には振り返る余裕は全然ありませ
んでした。とにかく外へ出ようと必死で足を動かしました。
「だ、大丈夫か!」
 石川が横をすり抜けて清水の所へ走りました。俺がようやく外へ出て地面に
尻餅をついていると、中から原田と石川が清水を抱えて出てきました。
「おい、お前は大丈夫か?」
 石川が俺に向かって言いました。ぐったりと疲れ切っていたのですが何とか
首を縦に振りました。原田と石川が手を離すと、清水はくにゃくにゃと地面に
座り込んでしまいました。
「んーーーーんーーーー」
「清水!おい!清水!」
 清水は目を閉じて、口を開けっ放しにして涎を垂らしていました。それなの
に口を閉じている時のような低いうなり声を出し続けています。
「んーーーーんーーーーんーーーー」
 俺たちは3人で清水を担いで車まで戻りました。車中でも清水は唸りっぱな
しで、俺はそれがものすごくイヤでずっと耳をふさいでいました。

610 名前:zom 投稿日:03/05/06 17:21
 清水の家に着いたのは朝7時頃でした。起きたばかりのおやじさんとおばち
ゃんに事情を説明すると、二人とも大慌てで、すぐ病院へ連れて行くと言いま
した。俺はムチャクチャ怒られるんだろうな、と思っていたのですが、おやじ
さんに「今日はもう帰れ。」と言われただけだったので、正直ホッとしました。

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