厳選怖い話
犬の散歩をするおじさん

この怖い話は約 3 分で読めます。

「ジャラッ・・・チャッ・・・ジャラッ・・・」
「それ」は、私がへたりこんでいる目の前を通過していきました。
懐中電灯の明かりの輪の中。
床から1メートルほど上空を素足で歩いている足がありました。

空気に色をつけるとこんな感じ?と思えるほどその素足は、あやふやな半透明の色をしていました。
そして、その両足には「あしかせ」がはめられていました。

どのくらいそこにへたりこんでいたのか記憶がありません。
気がつくと、両親が私の顔をのぞきこんで、名前を呼びながら、肩をゆすっていました。
YとMの叫び声を聞いて、飛んできたのだそうです。

母は私の肩を抱き、居間に座らせコーヒーをいれてくれました。
父はA君を抱きかかえ、お風呂場に連れて行きました。(失禁してたらしい。)
A君を家に送り届けてから、すこし落ち着きを取り戻した私に、両親が打ち明け話をしてくれました。

「あれを見ないようにと思って、あんたたちを早く寝かせてたんだよ」と。
「犬の散歩のおじさん」と、勝手に思い込んでいたのもどうやら両親の「すりこみ」のなせる技だったらしい・・・・。

なぜ、「あしかせ」をかけられたまま毎日欠かさず歩き回っているのかは、知る由もありませんが、なんにしても、私達家族が引っ越すまで続いていた現象なのでもしかしたら今でも、あそこでは鎖の音が聞こえているのかもしれません。

ところで、あの声を録音したテープ。
高校の古文の先生に聞いてもらったのです。
「た~か~さ~ご~や~~~」みたいなやつに詳しいと人づてに聞いたので。
先生によると、これは「うたい」というもので、能を舞う時に、または舞いながら、うたうものなんだそうです。
そして、この声の主はおじさんではなく、女なんだそうです。

うたっていたものは、現在も伝わっているそうで、先生は題名まで教えてくれました。忘れちゃったけど・・・
平家のことを題材にしたものだと言っていました。

最初ははっきりと録音されていたのに数日で音が不鮮明になり、やがて消えてしまいました。
その後、引越し、進学し就職し・・・
めまぐるしい身の回りの雑事のなか、テープのことはすっかり忘れてしまい、どこへまぎれてしまったか・・・。

高校の先生に預けっぱなしのような気もするし、なぜだか記憶にないんです。

この怖い話にコメントする

犬の散歩をするおじさん
関連ワード