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僕らは警察を呼び、簡単に事情を聞かれて、家に帰された。僕らは一言も口を聞かぬまま、
別れた。
その日、僕はいろんなことを考えた。
何故、ナナシはあのアパートに行こうと言い出したのか。
何故、ナナシはあの女のひとが2日前に自殺を図ったことを知ってたのか。
何故、ナナシはあの部屋の鍵の場所を知ってたのか。
ナナシがつぶやいた、「終わったな」って、なんだったのか。
601 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:51:53 ID:BU8a3ua+O
オカルト的な考えになるが、きっとナナシは、死人の声みたいなものが聞こえるんだろう。
死ぬ間際の、断末魔なんかが聞こえるタチなんだろう。
ナナシが「終わったな」って呟いたとき、
あの女のひとは死んだんだろう。鍵の場所も、あの女のひとの生き霊みたいなものが、
助けてほしくて、教えてくれたんだろう。
でも、僕らは間に合わなかったのだ。
僕はそう考え、凄く悲しくなった。僕らが間に合わなかったせいで、
あのひとは死んだんだ。まだ、助かったかもしれないんだ。
僕らが早く行っていれば--
そこまで考えて、僕はひとつの疑問が浮かんだ。
もし、もしさっきの仮説が正しくて、ナナシに不思議な力があるなら。
何故、ナナシはすぐにアパートに向かわなかった?何故、ナナシはすぐに警察なり救急車なりを、昨日の時点で呼ばなかった?
否、否否否。ナナシが早口でまくし立てていただけで、
本当に自殺かどうか、実際はわからない。
まして、あの部屋には、血溜まりと死体はあっても、凶器なんかは見当たらなかった。
否、否否否。それ以前に、それ、以前に。
僕らが部屋に入ったあの時点で、本当に、あのひとは死んでいたのか?
もし、まだ死んでなかったなら。そして、自殺じゃなかったなら、
そこまで考えて、背筋が凍った。
それからしばらく、僕はナナシとマトモに喋ることができなかった。
その後、ナナシと僕はある事件をきっかけに永遠の断絶を迎えるが、
それはまた別の話。