厳選怖い話
添い着

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「かっ、神田でしゅ」

「・・・旅館やってるとこか?」

「あい、あい」

男はなおも考えていたがやがて他の男達に目配せして言った。

「よし、あんたは助けてやる。だが、いいな。ここでの事は誰にも言うな。言えばあんたも連れていかなきゃならん」

僕はもう声が出せず必死に首を降り続けた。
頭が痛くなるほど降った。
気が付くともう誰もいず僕は一人遊歩道で下半身を濡らして座り込んでいた。
それから五分ぐらいは動けず、漸く駐車場まで這い出てきてチャリに乗り、何度か転びながら家に帰った。
親には川遊びで濡れたと言い、何も話さなかった。
夜布団に入った後もあの男の顔と声が脳裏に焼き付いて離れなかった。

月曜日、山口も辻田も福田も大場も学校に来なかった。
大場は風邪ということだったが、他の三人は昨日から行方がわからないから、誰か何か知らないかと担任が話した。
公園に行くことは僕達しか知らなかった。
僕は黙っていた。
やがて父兄にも連絡され、両親は僕を問いただしたが、僕は置いていかれて一人で時間を潰していたと一転張りで押し通した。
それほどあの男は怖かった。
早く時が過ぎてほしいと願った。
また昔に戻りたかった。
友達なんかいらない。
寂しくても穏やかな日々が懐かしかった。

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