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う”お”お”お”お”ぉ”ぉ”・・・

しばらくして目が覚めた。

俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。起き上がり手足を見たが何とも
ない。耳も両方付いている。時計を見ると朝の7時だった。お袋が
朝食の用意をしている。俺はキッチンのテーブルに腰掛けるとカレン
ダーを見た。5月5日だった。

「どうしたの?学校休みなのに。もっと寝ててもいいのよ」
「うん・・・」

464 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:47:44 ID:2Yx6JI//O
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お袋はそそくさと俺の前に朝ごはんを並べると、不振そうに俺の顔を
見た。俺はしばらく黙っていたが、さっきの夢の事、そして子供の頃、
買ってもらった五月人形について話し始めた。

俺は小さい頃、2つの五月人形を買ってもらった。1つは金太郎で、
もう1つは源義経だった。俺は金太郎人形が大きくて好きだったんだ
が、義経のほうは地味であまり好きではなかった。毎年5月になると
この2つを出してもらい、部屋に飾った。

ある日、俺はおもちゃの代わりに義経で遊んでみようと思いガラスの
ケースから取り出し、友達の怪獣の人形と戦わせたりした。遊びは次
第にエスカレートし川に流したり、ヒモでつないでぐるぐる回したり
した。そして事もあろうか、爆竹で・・・

すっかり変わり果てた姿になった義経に俺は怖くなり、そのままケー
スにしまうと押入れの奥へと閉まってしまったのだった。確かその時、
母親には邪魔だからしまった、と言った気がする。俺も翌年から丁度
中学生だったので、2体の人形はそのまま出さなくなったのだ。

お袋は黙って聞いていたが、やがてこんなことを言った。

「そっか・・・きっと義経クンは寂しかったんだね」

俺とお袋は朝食を済ますと、押入れから2体の人形を出した。じつに
数年ぶりだ。金太郎のほうは変わらないが、義経のほうは思ってた以
上に変わり果てていた。俺は痛んでいる箇所をプラカラーとパテで補
修し、鎧はお袋が1日かけてミシンできれいに直してくれた。足りな
いパーツは山のように積んであるガンプラから流用した。

465 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:50:12 ID:2Yx6JI//O
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翌日、以前にも増して勇ましくなった義経人形が出来上がった。

俺は義経に向かって正座し、以前してしまったひどい行為を心から詫
び、これからは大切にすることを誓った。そして人形は5月いっぱい、
部屋に飾っておいた。

今考えるときっとあの夢は、小さい頃から守ってくれた恩も忘れ、痛
んだまま暗闇にしまわれている人形からの「気づかせ」と「戒め」だった
のだと思う。それ以降、俺はあの夢は見ていない。

しかし当時は気が付かなかったのだが、今これを書いていておかしな
点に気が付いてしまった。門の外にいたあの老婆だ。あの夢の結界は
俺の自宅の敷地内だった。しかしあの老婆は完全に門の外、つまり敷
地外および結界外にいたのだ。あれ以来、その老婆には出会っていな
いが、気が付いてしまった今、俺は何か不吉な予感がしている・・・

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