殿堂入り怖い話
リアル

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本山に預けてもらって一ヶ月経った頃S先生がいらっしゃった。
S先生「あらあら、随分良くなったみたいね」
俺「えぇ、S先生のおかげですね」
S先生「あれから見えたりした?」
俺「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないですか?ここ、本山だし」
S先生「そんな事ないわよ?」

顔がひきつった。

S先生「あら、ごめんなさい。また怖くなっちゃうわよね」
「でもねTちゃん、ここには沢山の苦しんでる人がいるの。
その人達を少しでも多く助けてあげるのが私達の仕事なのよ」
多分だけどS先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。

S先生「Tちゃん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんだから」

俺はS先生の言葉に従った。あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたからね。
それに一日はあっという間なんだけど…何て言うか時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。
(何か矛盾してるけどね)そんなこんなが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。
その間S先生は(二ヶ月前に来たきり)こっちには顔を出さなかった。
やっぱりS先生の言葉がないと不安だからね。
でも、哀しいかな流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離去れると物足りない気持ちが強くなってた。

実に二ヶ月ぶりにS先生がやって来てやっと本山での生活は終りを迎えようとしていた。
身支度を整え、兎に角お世話になった皆さんに一人ずつ御礼を言いS先生と帰ろうとしたんだ。
でも気付くと横にいたはずのS先生がいない。「あれ?」と思って振り向いたら少し後にいたんだ。
「歩くの速すぎたかな?」って思って戻ったら優しい顔で
「Tちゃん、帰るのやめてここに居たら?」って言われた。

実はS先生に認められた気がして少し嬉しかった。

「いや、僕にはここの人達みたいには出来ないです。本当に皆さん凄いと思います。真似出来そうもないですよ」

照れながら答えたら

S先生「そうじゃなくて帰っちゃ駄目みたいなのよ」
俺「え?」
S先生「だってまだ残ってるから」

また顔がひきつった。
結局、本山を降りる事が出来たのはそれから二ヶ月後だった。実に五ヶ月も居座ってしまった。多分、こんなに長く家族でも無い誰かに生活の面倒を見てもらう事はこの先ないだろう。
S先生から「多分もう大丈夫だと思うけど、しばらくの間は月に一度おいでなさい。」と言われた。
アイツが消えたのか、それとも隠れてれのか本当のところは分からないからだそうだ。
長かった本山の生活も終ってやっと日常に戻って来た。 借りてたアパートは母が退去手続きを済ましてくれていて、
実家には俺の荷物が運び込まれてた。

アパートの部屋を開けた時、何かを燻したような臭いと部屋の真ん中辺りの床に小さな虫が集まってたらしい。
怖すぎたらしくその日はなにもしないで帰って来たんだってさ。
翌日、仕方無いんで意を決してまた部屋を開けたら臭いは残ってたけど虫は消えてたらしい。
母には申し訳ないが俺が見なくて良かった

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