カテゴリー
洒落怖

お届け物

日曜日の昼下がり、ぼんやりとテレビを眺めていると、チャイムが鳴った
玄関へ行きドアを開けるとそこには、黒一色のワンピースを着て頭に赤いカチューシャをはめた
四十代後半ぐらいの女が立っていた
「お届けものです…」女は籠に入った何かを唐突に俺に突きつけてきた
「えっ、なんすかこれ?」
という俺の至極当然の問い掛けを女は完全に無視して「これにサインか印鑑を」と言った
「いやサインって、これ新聞紙じゃないですか、しかも雑に破いた…」と俺が困惑を露わにすると
女は「ちっ」と舌打ちし、「早くしろよ…」と小声で伏目がちに呟いた
うわ…なんかあぶない女だな、下手に逆らわない方が身のためだなと思い
新聞紙の写真の政治家の額に村上龍という思い付きの偽名を書き綴った
女は「まいどあり」と目も合わさずに新聞紙を俺から引ったくると
竹ボウキを引きずりながら玄関から立ち去った
一体何なんだよあの女…と暫く呆気にとられていたが籠の中身が気になったので
恐る恐る被せてあった布を取るとそこには、ビチョビチョに濡れた食いかけのパイが入っていた
『あたしもこれ嫌いなのよね』という走り書きのメモも添えてあった

表から様々なクラクションや邪魔なんだよ!といった怒声が聞こえる
玄関から覗き見るとホウキに跨って動かない女のせいで酷い渋滞が発生している
暫くすると遠くからサイレンも聞こえてきた。どうやら誰かが通報したらしい。
俺はグチャグチャのパイを女にぶん投げて扉を閉めた
そして、飛べない俺らのために、一晩中泣いたのさ

カテゴリー
洒落怖

誤報

去年の今頃にあった話を書いてみる。
そんなに怖い話でもないかもしれんが。

お盆も過ぎるかな、くらいの頃。
夜勤担当なんで、俺はいつも通りフライヤー洗いやら品出しやら色々やってたんだ。
ちなみにウチのコンビニは夜勤は一人体制。
で、バックヤードのPCで発注してたらやたらと誤報が鳴るんだよ。
お客さんが来たときの「ピンポーン」って音。
最初はいちいち店内まで出て
「いらっしゃいませ」って言ってたんだけど客はいない。
まあ誤報はたまにあるからいちいち気にしてなかったんだ。
夏に誤報が多いのは店内に蛾が入ってきて、それに反応したのかな? って思ってる。
虫のいない冬場にも誤報があるのは謎だけど。
作業がある程度済んだころ、お客も来なくなる2時過ぎくらいに
いつも冷蔵庫入ってジュースと酒の品出ししてたのね。
冷蔵庫の中って音が聞こえないから
いつもバックヤードに鳴る来客音を聞くために
ドアを開けたまま作業するんだ。

196 本当にあった怖い名無し sage 2012/08/23(木) 20:47:26.25 ID:qdMci6Ji0
でも誤報があるくらいだから
正直あんまり来客音はアテにしてない。
お客さんが入ってきても
まれに鳴らないでカウンターで待たせちゃうこともあるから。

だから時々、冷蔵庫の棚と棚の間から店内を覗き見て
お客さんがいないか確認しながら品出ししてるんだわ。
しばらく品出ししてて、20分くらい経ったころかな?
品出しに必死で店内の確認を忘れてたから、
カウンターが見える棚の隙間を見てみたら、お客さんが目の前にいたの。
うつろな目でアサヒスーパードライを見てたんだ。

直後に俺とモロに目が合った。
なんか疲れきったような感じのしょぼくれたオッサンだった。
一瞬心臓が止まるかと思うくらいビビッた。
酒の棚と棚の間からだから全体像は見えなかったんだけど
お客さんいたの気づかなかった。やべぇと思って慌てて出てったんだ。
クレームにならないようにいつもより元気に「いらっしゃいませー!」って。

そしたら店内には誰もいなかった。
棚に隠れて見えない位置に移動したのかと思って
店内を見て回ったけど誰もいない。
トイレも確認してみたけど誰もいなかった。

201 本当にあった怖い名無し sage 2012/08/23(木) 21:27:43.02 ID:qdMci6Ji0
あれぇ? 勘違いか??
って思って、仕方なく作業に戻ったのね。
その時点でちょっと心拍数は上がってたけど。

もしかしたら、お盆でこっちに帰ってきてた人が
アサヒスーパードライが飲みたかったのかもしれない。
品出しも終わってそう思いながら冷蔵庫を出たときに
またピンポーンって鳴ったんだ。
今度こそ客か? と思って店内に出ていったら、また誰もいなかった。
あー、もしか今見た人が買えないと諦めて帰ったのかもしれない。
ってなぜか思って「ありがとうございましたー!」って元気良く言っておいた。

カテゴリー
洒落怖

工事現場

この話は今から約20年前、私がまだ中学生だった頃の出来事です。

夏休みも後1週間程となった8月の終わり。
ろくに宿題も終わっていないにも関わらず、友人2人と近所の市営プールに遊びに行くことになった。
30度を超す熱気と、私の自宅正面の家でここ1週間程行われている駐車場工事の騒音とで、とてもじゃないが家の中で友人を待っている事が出来ず、1時間ほどゲーセンに行こうと表に出た。
すると、顔見知りとなっていた工事現場の男性が、パワーショベルの操縦席から気さくに声をかけてきた。

「よう、ボウズ宿題は終わったのか?」

ここ最近の日課のような挨拶を交わし、私はゲーセンに向かった。

1時間ほどゲーセンで過ごし、昼飯を食べに自宅に戻ると約束していた友人2人が、先ほど挨拶をした工事現場の男性に怒られていた。
どうしたのか聞いてみると、約束の時間より早めに来た友人が、昼休憩で誰も居ない工事現場のパワーショベルに乗り込んで悪戯をしていたらしい。
私が戻ってきた事をきっかけに2人は解放されたのだが、2人は相当こたえたらしく

「プールに行く気がしなくなったから帰る」

と言い帰ってしまった。
私はさして気にもとめず、自宅に入った。

それから数時間後、自宅の前がやけに騒がしいので、何事かと思い表に出てみると、どうやら正面の家の工事で事故がおきたらしい。
現場を取り囲む近所のおばさんたちの向こうで、作業服の人達があわただしく動いている。

「おい大丈夫かっ!」

「しっかりしろっ!」

「救急車はまだかぁッ!」

怒鳴るような叫び声、呆然と立ち尽くす人、泣き崩れて我を失っている人・・・
その場の雰囲気から、簡単な事故ではない事を窺い知ることが出来る。
人だかりの隙間から覗き見てみると、一人の作業服の男性が横たわっている。
その周りを、同じく作業服の人間が数人取り囲んでおり、詳しい状況はわからないが、横たわった男性が周囲の呼びかけにもぴクリとも動かず、また作業服にかなりの出血が見られることから、私は漠然と

『こりゃ駄目だろうな』

と考えていた。
程なくして救急車が到着し、救急隊員によって応急処置が始まった。
どうやら頭部にかなりのダメージを負っている様なのだが、救急隊員や同僚の作業員、野次馬のおばさん達に邪魔され、男性の足元しか見ることが出来ない。
私は目の前の出来事を、まるでテレビの番組のようにボーっと眺めながらふと、倒れている男性はいったい誰なんだ、と思い始めていた。
作業員の顔は殆ど覚えており、野次馬の隙間から何とか一人一人確認してみると、いつも気さくに声をかけてくれる男性の顔が見当たらない。

『ま、まさか!』

先ほどまでは他人事だったのが、急に身近なことに感じられ、変な震えが全身を襲ったことを覚えている。

何分ほどそこにいたのだろう、帰ったはずの友人に肩を叩かれて我に帰ると、救急車が音も無く走り出すところであった。
やはり駄目だったようである・・・
私は、名前も知らない顔見知りが亡くなった事に多少動揺しながらも、現場から離れられなかった。
既に野次馬の数も減り、先ほどより大分状況が把握できるようになった。

カテゴリー
洒落怖

おお、Yか

107 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/11/23(木) 21:06:45 ID:R+kCsyBN0

1/5
友人Yから聞いた話。
今から二年ほど前、Yの爺さんが死んだ。
Yは昔から超が付くほどの爺さんっ子だったもんだから、
葬式のときなんかは年甲斐もなく鼻水たらしながらわんわん泣いたらしいのだが、
ちょうどその爺さんが死んでから、初七日の日の事。
その日はYの住んでるところでは暴風警報が出されたくらいにやたら風の強い日にも拘らず、
学校からの帰りのバス賃も底をついたYは、仕方なく家まで歩くことに。
途中何度も飛ばされかけながら死ぬ思いで、やっと夜の七時半を少し回ったくらいに家に着き、
鞄から鍵を出して玄関を開けた。
すると、Yの帰りを待っていてくれてたかのように、丁度良いタイミングで玄関から真正面にある
Yの部屋のドアが開いた。部屋の中では電気もテレビもついていて、おまけに唯一の暖房器具である
ハロゲンヒーターまでスイッチが点いていた。
ははん、これは母ちゃん、気を効かせて俺の部屋を暖めておいてくれたか。
Yは嬉しくなって、いつもより明るい声でただいま、と言い玄関を上がった。

108 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/11/23(木) 21:07:33 ID:R+kCsyBN0
2/5
だが、いつもは返って来る返事が今日は無い。
不思議に思い、さっき脱いだ靴の方を見ると、玄関にはたった今脱いだ自分の靴が散らかっているだけで、
母はおろか父の靴も姉の靴も無い。
そう言えば、今日は自分以外の家族は全員祖父の法事で家には遅くまで帰ってこない日だった。
とっさにYの頭には昔映画で見た真っ暗な部屋の中に立っている髪の長い女の幽霊のビジョンが浮かんだ。
まさか、とは思ったが幽霊やらお化けじゃなかったとしても泥棒と言う線はありえる。
Yはなるべく足音を立てず部屋の入り口まで進み、そっと中を覗き見た。
部屋の中には、先日死んだはずの祖父がこちらに背中を向けて座っていた。

109 本当にあった怖い名無し sage New! 2006/11/23(木) 21:08:06 ID:R+kCsyBN0
3/5
それが祖父だと分かった途端、Yの恐怖心は一気にしぼんだ。
昔からホラー映画も誰かと一緒でなけりゃ見れないほどの怖がりだったYだが、
たとえ本物の幽霊であったとしても祖父となれば話は別だ。
Yは懐かしさと、死んでも自分の所に会いに来てくれた事への嬉しさで、思わず涙ぐんでしまった。
爺さんは、生前の癖だった特徴のある咳を二、三度しぎこちない動作で毛のない後頭部を掻いた。
「じいちゃん」
Yが呼びかけると、爺さんはのそりと立ち上がり、振り向いた。
気のせいか、振り向きざま、爺さんの輪郭線がぐにゃりと歪んだように見えた。

カテゴリー
洒落怖

トイレ

179 1/2 sage 2009/07/29(水) 21:59:12 ID:A5DDdXZ80
投下。

深夜の雑居ビルの警備のアルバイトにて。

新入りであった私は、まず同僚と2人で回ることになった。決められたルートを懐中電灯片手に歩くだけという極めて楽な仕事であった。
特に何事もなく、こりゃ楽なバイトだなと思い始めた頃、3階の奥にあるトイレの前に差し掛かった。
すると同僚が「トイレに行きたい」と言い始めた。新入りである私は断る理由もなかったし、
私も軽い尿意を催していたため、一緒にトイレへと入った。何の変哲もない、小便器が4つ、
その向かいに大便用の個室が2つあるという、ごくごく普通の綺麗なトイレであった。
同僚は大きい方らしく真っ直ぐ大便の個室へ向かって行った。
こんな時間に誰もいるはずないのに、癖なのか、わざわざノックをしている同僚の様子が可笑しかった。
当然ながらドアの向こうから返事はなく、そのまま同僚はノブに手をかけた。
開かない。

中に誰かいるのか、それとも扉の故障なのか何度かノブを回していたが、結果は同じようであった。

諦めたのか、同僚は隣のトイレへ入っていった。

用を済ませた私は、開かずのトイレが気になり始め、件のトイレの前へ。
ノブを見ると、中から鍵が閉められているのを意味する赤い塗装を覗かせていた。誰か入っているのだろうか。
「用を足してる間に、心臓発作か何かで意識を失っているのかもしれない」
「酔っ払いが酔い潰れて寝てしまったのか」
後者であることを祈り、ドアに耳を当ててみた。しかし。鼾は聞こえてこず、隣の個室から気分の悪い音がする以外は無音であった。
前者であったら大変だと思い、私はいろいろ考えてみた。
その結果、私がとった行動は「ドアの上から中を覗き見る」ということであった。
掃除道具入れからバケツを持ち出し、足場を作り、ノブに足をかけ、体を思い切り上にあげ、ドアの上部に手をかける。そして中を覗いた。

そこにあったのは、サラリーマンらしき中年男性の死体であった。よく見ると小蝿が飛んでおり、首にネクタイをくくっていた。

180 2/2 sage 2009/07/29(水) 22:00:42 ID:A5DDdXZ80
なるほど、自殺したようである。が、不思議と死体特有の異臭はしなかった。
普通こういう場合は、警察を呼ぶのが最善であると思うのだが、その時の私は何を思ったか、他の同僚にも知らさなければと思い、
うんこをしている同僚を残し、警備員の詰め所へと向かった。特に焦らず、極めて冷静にである。
しかし、よくよく考えてみれば、このビルには私と今うんこをしている同僚しかいないのである。もちろん詰め所には誰もいなかった。

とりあえず戻ろうと先ほどの3階の奥へ向かった。

しかし、そんなところにトイレなどなかった。

どんなに探しても、トイレはない。場所を間違えたか、階を間違えたか全てのトイレを探してみたがトイレはない。
そこで記憶が終わっている。

カテゴリー
洒落怖

葬式の話

454 葬式の話。1 sage 2009/07/09(木) 22:53:15 ID:QpCUMc9Z0
そういえば、俺の爺様の葬式のとき、こんなことがあったそうだ。
ほとんどが母親からの伝聞なので、実体験ではないのだが。

式自体は滞りなく進み、無事に終わった。
通夜が終わると集まっていた親戚たちも帰り、爺様の子供たち(俺の母親と叔父二人)
が酔った頭で香典の勘定をしていた。

すると、洗い物をしていた叔父の奥さんがやってきて
「あなた、拝ませてほしいという人が来てるんだけど…」という。
結構に酔っていた母親たちもさすがに不審に思い
(これは拝むふりをして香典を泥棒しに来たのかもしれない)と考えた。

しかし叔父たちも動転していたのであろう、「せっかく来てくださったのに、失礼だ」
と思ってしまい、また香典をしまっておき、いざのときは男二人何とかなるだろうとも
楽観的に考えた結果、その男を上げる事になってしまった。

母親に聞くと、男の風貌ははっきりしないという。
とにかく男であることは確かなのだが、中年であったような気も、また老人であったような気もする。
また服装も行き、帰りで違ったものを着ていたような気がするという。
印象深かったのが、「男の体からは、魚の生臭いにおいがしていた」ということだそうだ。
また男の人相は覚えていないが、終始ニコニコと笑っていたという。
しかし母親は「笑っていたのに、なんだか感じが悪くて不気味だった」と言っていた。

455 葬式の話。2 sage 2009/07/09(木) 22:58:49 ID:QpCUMc9Z0
男は仏間に入るなり、「線香を消してくれませんか」と妙な事を言う。
「失礼なやつ」とも思ったが、まあせっかく来てくれたのだからとも思い言う通りにすることにした。
次に男は、「私と仏様を二人きりにしてください」という。
これまた失礼な頼みだが、香典もしまい金目の物や火の気も無いので男の思い通りにさせてやったそうだ。

ふすまを締め切って隣の座敷から様子を伺うが、読経などする気配も無い。
これはいよいよ怪しいと感じ、仏様を傷つけられたら大変とそっと覗き見たそうだ。

異様な光景が広がっていた。

男は仏様の顔の鼻先に自分の顔を近づけ、ニコニコと笑顔を浮かべながら何かをつぶやいている。
母親に聞くと、その男はどう見てもそのまま爺様に触れようとしているようにしか見えなかったという。
しかし決して仏様には触れようとしなかったそうだ。

しばらく見ていると、男の呟きがはっきりと大きくなったのが判った。

456 葬式の話。3 2009/07/09(木) 23:05:28 ID:QpCUMc9Z0
「むねん。むねん。むねん。むねん。むねん。むねん。むねん。」
男はそう、はっきりと繰り返していたと言う。
総毛立つ様な思いがしたそうだ。
また顔は相変わらずにたにたと笑っているが、なぜか激怒しているように見えた、という。