洒落怖
巨大ヒル

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僕はバケツにポットのお湯をぶちまけ、景気付けに一味唐辛子の瓶の中身も投入して立ち上がりました。
そして何事か這いずって喚いているCとそれを抑えるKを背に、バケツを持って網戸の前へと向かいます。
後から聞いた話ではCは腰を抜かしていたそうで、よほどヒルが嫌いなようでした。
僕もあまり好きではないし、可哀想ですが個人の邸宅の敷地内に入って来た害虫は追い払わねばなりません。
ずざざざ、と巨大ヒルが砂利を巻き込んで進んでくる音が間近で聞こえます。
夜の暗闇ではっきりは見えませんが、丁度網戸の辺りを通過するところのようです。
僕は網戸をスパーンと開け放ちました。
縁台の真下にいたそれは、抱き枕のような大きさで、真っ黒で、毛むくじゃらで、胴体から伸びた針金のようなもの先にビー玉のような目がぶら下がっていました。

なめくじ。

僕は持っていたバケツを取り落とし、その熱湯がもろに巨大なめくじにかかりました。
「ミギョオオオオオオオオオオオオオオオオ」
となめくじは鳴きました。
なめくじだけは駄目です。子供の頃、サラダの葉っぱの裏にいたのに気付かず噛んでしまった時から本当に駄目でした。

なめくじはしゅわしゅわと湯気を出しながら悶え転がっています。
僕は踵を返してキッチンへ走り、徳用パックの塩を引っ掴んで戻ってくると、その中身を滝のようになめくじにまぶしました。
「みいいいいいいいいいいいい」と声を上げるなめくじは可哀想な気もしましたが、止めることはできませんでした。
454 :なめくじ嫌い@\(^o^)/:2015/04/04(土) 19:58:06.95 ID:TYGTOvZ20.net[4/10]
やがてなめくじは動かなくなりました。
退治できたようです。可哀想な事をしたと思いながらも僕はほっと胸を撫で下ろしました。
暗闇で輪郭がぼやけていますが、反撃の機会を窺っているとかまた動き出しそうな感じではありません。
しかし頭が冷静になってくるにつれ、なめくじってそもそも鳴くのかという疑問と、何よりその大きさに恐怖を感じてきました。

僕は意見を仰ぎにKとCの待つリビングへと戻りました。
Cにもなめくじの叫び声は聞こえたようで、気持ち悪さにか涙を流し、白いを通り越して紙のようになってしまった顔色で、「##$@は…?」と尋ねました。
僕が「熱湯と塩をかけたら死んだ、多分なめくじ」と答えると、まるで時間が止まったかのように口を開けて凍りつきました。
証拠になめくじの死体をみせようと僕が網戸の前までKとCを引っ張っていくと、今度は僕が凍りつく番でした。
なめくじの姿が消えていました。

逃げられたのか、と家の周りを捜してはみましたが、影も形もありませんでした。
熱湯と塩をかけられて、急激に縮小して消えてしまったのかもしれません。
それにしても不思議だし、視界が悪かったとはいえあの大きさは今思えば本当に異様でした。

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