洒落怖
時計回り

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従弟は鳥居を潜るとすぐに煙草に火をつけ、不意に俺に煙を吹き掛けた。
俺が怒ると、狐にでも化かされたんじゃないかと思って、などとぬかした。
そんな事一切信じていない癖に、明らかにからかっている。
「一番奥にあった雛壇気にしてたみたいだけど、あれ、人形供養をする場所だってさ。」
来た道を土産物店の並ぶ通りへ戻りながら、従弟は半笑いでそう言った。
「あそこの人に写真いいかって聞いたら、奥のが写るとちょっと困るって言うから。
訊いてみたら毎朝あの畳の上で宮司さんがこう、
タカマノハラニカムズマリマス…かな、祝詞をあげるそうだよ。
ナオさんはそんなのが好きだねぇ。行ったり来たりして見てたろ、まったく。」
言い終えて、それから少し考えて、ヤツは何か思い出した顔をした。
「そういえば、変な人形があったね。」
俺はヒヤリとした。
「水色の服の…」
「ああ、完全に横向いちゃって、近くで顔が見られないの。正面向けとけばいいのに。」
また俺を怖がらせようとして、と思ったがそんな事はなかった。
ヤツは俺の反応を窺うでもなく、夕日で橙に染まる町並みにカメラを向けていた。

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