洒落怖
濡れたチケット

この怖い話は約 2 分で読めます。

演奏がはじまりました。わたしはチケットを事務室に預けてからゲートに戻ると、絨毯に、
透明な液体がぽつぽつついているのが見えました。そこだけ、絨毯の模様がゆがんで見え、
小さなレンズをところどころに置いたような違和感があるのです。わたしは逃げだしたい気分に
なりましたが、どうしてもそれを触らずにはいられませんでした。すると、液体はわたし
の指先で粘り、手首から前腕、肘にどろどろ流れていきました。指にはひとつぶ、少し
しか手にとらなかったはずなのに、右手にいく筋も跡がつくほど液体が流れていったの
です。怖くて、気味が悪くて仕方ありませんでしたが、わたしはモップを取って、公演
終了してからも拭きとろうとしました。それなのに、丸い、ちいさな水たまりの跡は
取れませんでした。マネージャーが掃除を手伝ってくれたのですが、わたしが奮闘してい
る作業を不思議そうに眺めているのを覚えています。そのときは返答を聞くのが怖かった
ので黙っていたのですが、マネージャーにあの水滴の跡は見えていたのでしょうか?
もし見えていないのだとしたら、そう考えると、バイトを辞めたいまでも怖くなります。

126 5 2009/07/22(水) 02:40:55 ID:+r78dEHF0
最後にひとつだけ。わたしは指先についたあの水の臭いをどうしても表現できません。
なんというか、淋しい、かすかな臭いだったような気がします。

安っぽいホラー小説のようになってしまいましたが、なんだかわたしもすっきりしました。
誤字がいくつかありますが、ご容赦を。おやすみなさい。

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