洒落怖
家を揺らす女

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この家の住人が普段使っていたらしきけ屋に出た。
ベッドやタンスから察するに、女性の部屋らしい。
Cがタンスを漁ると、驚いた事に服や下着はそのままだった。
もちろん、カビが生えたり黄色くなったりして興奮できるような
状態ではなかったが、Cは黒いショーツを広げて「うひょー」とか
言っていた。馬鹿だオマエ、と俺とAが苦笑する。
ライトで部屋をぐるりと照らすと、洗濯物が部屋星されていた。
茶色いワンピースがライトに浮かび上がって、思わす「うおおッ」と
声を上げてしまう。その声で他の3人も洗濯物に気がつく。
一瞬、誰か廃屋に住んでいるのかとも思った。しかしそのワンピースや
他の洗濯物(下着やシャツやズボン)の状態から、もう何年も干された
ままの状態であることが分かった。たぶん、廃屋になった時期から干されているのだろう。
「なぁ。普通、洗濯物干したまま廃屋にならねぇよな?」
聞かなくても分かっている事を、わざわざBが口に出す。
「夜逃げだろ」とAは答えたが、心の中で「違う」と確信を持って
否定してたのを、今でもよく憶えている。

888 (3/4) sage 2009/08/03(月) 15:02:26 ID:9sWWdmtp0
ギィギィと、沈黙する俺達の代わりに家がきしんでいた。
妙な雰囲気になって「帰ろうか」って流れになった、その時。
今まできしんでいた家の音が「ギイイッ!」と大きくなった。
もちろん強い風なんて吹いていない。なのに家が揺れだした。
ギシギシと音を立て、目に見えて揺れている。天井から木片や埃が大量に落ちてきた。
このままだと崩れる! 驚いた俺達は悲鳴をあげながら玄関へと
走り出した。廊下の穴に足を突っ込んで俺やCがコケる。
AやBが手を引っ張って助けてもらい、再び走り出す。
もうその頃には天井が崩れ落ちたりして、家が潰れる寸前だった。

なんとか家の外へ飛び出す事ができた。
ライトで照らされた家は、まだグラグラギイギイ揺れおり、少しずつ
壊れていく。その音に波の音も混ざり、異様な世界が目の前にあった。
やはり強い風は吹いていない。地震も起きていない。
すると、Aが「おい!」と叫んだ。その声に俺達は反応し、息を飲む。
Aがライトで照らしている先に人がいた。女だった。高校生ぐらいだろうか。
白いキャミソールのような服で髪は長かった。その女が家を揺らしていたのだ。
じっと、俺達の方を見ながら。

最初は地元の高校生が、肝試しに来たヨソ者をからかっているのかと思った。
でも違うんだ。周囲をライトで照らしても、ソイツ以外誰も
いないんだよ。そいつ1人が朽ちた家を揺らして壊しているんだ。
無表情で、こっちを見続けながら黙々と。
やがてバキバキと屋根が完全に崩れ落ちた。想像以上に凄い音だった。
で、女が廃屋の壁から手を離し、体をこっちへ向けた。
顔はこっち向けたまま動かさず、体だけ「ぐりっ」と動いたんだ。
俺らはそろって悲鳴をあげて、車を停めた場所まで駆け出した。
遠くでいくつか明かりが灯る。音に気付いた地元の人が何事かと
家の灯をつけたらしかった。
俺らは車を素通りして、ひたすらその明かりへ向かって走って行った。
丁度ライトを持って見に来た住民に出会い、助けを求めた。
俺は後ろを振り返ったが、女は付いてきてはいなかった。

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