洒落怖

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「なんな――」
発した言葉の途中、女子大生の首筋は刺され、赤黒い血をどくどくと噴き出しながら身体が前のめりになる。
身体の上に何かが飛び乗る。
目を凝らすと――それは老婆であった! 
しみと皺だらけの黒い肉のせいでよく分からぬが、老婆の目は光を失っている。
唇は縫い付けられ、髪の毛を全部剃り、尼僧の格好をしている。
その法衣の端は、赤く不自然に染まっている。
その老婆は、老婆と形容することすら躊躇われるような――異形のなりをしている。
そして、その異形は、女子大生の目に移り、手に持った白銀の針を用いて眼球をくりぬく。

そうして取り出した二つのどろどろな塊を、異形は食する。食べ終わったとき、異形の頬には白いものがくっついている。
一つげっぷをしてから、異形は舌を切断してこれも食らうと、懐より取り出した糸を用いて口を縫い付ける。
冷酷非情な手つきであり、相当の手練であることを感じさせる。
それからは誰もが予想していた光景が映し出される。首から腰までを正確に突き刺し、恥部を封印する――。
だが、一番の問題は最後である。
異形は死体を「処理」し終えると、女子大生の頭上から突如花瓶の前に転移し、目に赤い光を宿して、

「われェを止めェよォうとッしてッもむゥだだァ……
しゅはァ視ィたものにうッつりィ、われェのおォもいィもォそォしてェわれェもそれだァけかッずをまッす……
じきにそちらへゆく……」

390 針3/3 sage 2009/07/24(金) 12:34:26 ID:yVmehYtq0
ビデオが止まったとき、皆の顔は蒼ざめ、花瓶を見つけた警部はあまりの気持ち悪さ故トイレへと駆け込んで嘔吐した。
またトイレにあの老婆が現れるのではないか――と嘔吐している最中に警部は思ったが、それは間違いだった――
映像が流されていた部屋に戻って彼が見たのは、他の警察官が全員ばったりと倒れ伏していた光景。

部屋は地獄絵図と化している。
血は床を覆い尽くし、饐えた匂いが部屋中に充満している。
うつぶせに倒れている同僚を恐る恐るひっくり返して顔を見ると、丁寧に目玉が抉られ、口が縫われている。
他の警察官もそうだ。
警部はその場にへたり込んだが、動く人間は誰一人とていない――キーボードとマウスをせこせこと操作して、自分の映った映像をYoutubeにアップロードする老婆以外には。

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