洒落怖
深夜のツーリング

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今度はエンジンがかかったのだが、しっかり点灯したヘッドライトが照らし出したのは、
何もない空間だった。
あれほどはっきりと存在感のあった白い後ろ姿が、いつの間にか忽然と姿を消していたのだ。

その場所へは絶対に近づきたくない、だけどここでUターンするのも怖い。
真っ暗闇の後ろを振り返ることも出来そうにない。
その場から全く動くことが出来ず、今見た白い陰を必死に分析しようとした。

あれがもし仮に、本当に人間だったとしても、
こんな暗い場所で周囲には何もない林道のような寂しい道の、
しかも深夜の2時半に、女性が一人で歩いていることはあり得るだろうか?
明かりも持たずに一人でいることなど、どう考えても絶対にあり得そうにない。

しかも、こちらに背を向けて道の端にじっと立っていることなど、
決して生きている人間のなせる事とは思えなかった。
その上、道の両端は深い森のようになっていて、
そこに入り込んだとしてもこれほどの一瞬で姿を見失うことはなさそうだ。

630 深夜のツーリング(5/5) sage 2009/06/09(火) 12:26:58 ID:8/xgvKzj0
ブルブル震えながら進むことも戻ることも出来ずにその場で立ち往生していると、
今度は突然、耳元から「一緒に探して…。どうしても見つからないの…。」という
虚ろな女性の声がはっきりと聞こえてきた。

その後も何か聞こえたような気がしたが、もはや、じっとしてはいなかった。
グリーンシグナルが点灯したレーシングライダーのように、
もの凄いスタートダッシュでその場を離れ、後ろを振り返ることなく逃げ出した。

その後は特に何もなく無事帰宅でき、特に体調にも変化はなかったものの、
あのとき耳元で聞こえた言葉が何を意味していたのかは結局わからなかった。
その当時ネットで調べた限りでは、
あの橋の周辺で何か事件や事故のようなものは見あたらなかったのだが、
一体過去に何かあったのだろうか?

彼女は今でも深夜独りぼっちで見つからない何かを探しているのかもしれない。

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