洒落怖
引きずる

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「…この部屋のドアの前で立ち止まってる…?」

俺は嫌な汗がどっと出てきた!

563 本当にあった怖い名無し 2009/02/08(日) 01:00:02 ID:CA8gn7Z0O
絶対動いてはいけないと思った。
友達に話しかけたかったが、友達からは寝息が聞こえた。
本当に熟睡していたようだった。
この部屋の造りは少し変わっていて、一般的なアパートの部屋と少し違っていた。
ドアを開けると、いきなり横長なリビングの部屋があり、集金などで見知らぬ人が来てもドアを開けるとすぐに部屋全体が見える感じ。
つまりその時ドアの向こう側に立ち止まっていた得体の知れない奴と、横になっていた俺の距離はドアを隔てているとは言え、実質三メートルくらいしか離れていなかった。

「絶対に見られている!」

俺は必死に息を殺した。 早くこの部屋から去って欲しいと思った。
もの凄く長く続いた静寂の後、その足音は再びズルッズルッと何かを引きずりながら、さらに奥の隣の部屋に行った。
俺はほっとしたが、その後その隣の部屋でそいつは、
ガチャガチャッ!
ガチャガチャッ!

ってドアを強引に開けようとしたんだ!
もうそいつがこの階の住人でない事ははっきりとわかった。
しかしドアを強引に開けようとしている事から、そいつが幽霊とかそんな類なものではないようにだけは感じた。
もうそれがわかっただけで良いから、俺はとにかくこの最悪な時間が早く過ぎるよう、寝てしまいたかった。

564 本当にあった怖い名無し 2009/02/08(日) 01:01:31 ID:CA8gn7Z0O
そしてそいつもその部屋を諦めてさらに奥の隣の部屋に向かって行った事が足音でわかったので、俺は極力息を殺しながらそっと体の向きを変えた。
床から耳を離し、その足音自体遠のいて行ったので、ほとんど足音は聞こえなくなった。
俺はやっと少しウトウトしてきて、眠れそうになってきた。
すると、

ズルッズルッ!

また足音が戻ってきた! もう本当に勘弁して欲しかった。
しかし今度は隣の部屋などは、その足音は素通りだった。
この部屋も素通りしてくれる事を俺は期待したんだが、やはり。

その足音は再びこの部屋のドアの前で止まってしまった。

ガチャガチャ

ドアを開けようとしている!
俺は体が硬直してしまった。
が、その時友達がその音を不快に感じたのか
「ううーん!」
と寝ぼけながら、寝返りをうった。
俺が目を開けて友達の方に視線を送ると、カーテンからうっすら日の光が見えた。
少し夜が明けてきていたようだ。
俺が気がつくと、すでにドアの音も足音もしなくてドアの向こう側に気配も感じなかった。
俺が気がつかないうちに、あいつはエレベーターで降りて行ったのか。
わからない。

その後友達はあの夜の老婆の話もしないし、明るく忘れているようだった。
だから、俺も敢えて俺があの夜体験した事も話していない。
現在は仕事上、友達も引っ越している。
でも俺はたまにあの夜の事を思い出す。
友達も口には出さないが、俺と同じだと思う。

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