洒落怖
プール

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小一の七月、プール学習でのこと。
内向的ないっ君は急にプールが嫌いなった。
「いっ君、幼稚園のプールは平気だったよね?」と聞いてみた。
「だってさ、こんなに小さい僕らとあんなに大きな六年生が同じプールに入るんだ。ありえない」
そう言って、登校途中の背の高い六年生を指差した。
「溺れたら、まず沈む。一度、浮き上がる。助けを呼ぶうちに、また沈む」
いっ君は嫌いな事になると、本当にナーバスになる。
そんな中、お家がセレブのさっちゃんは朝からルンルン(あんなに機嫌の良いさっちゃんは久々だった)。
どうやら、子供用のマニキュアで爪を赤に塗ってきたらしい。
自分も女の子なので、やっぱりうらやましかった。
「溺れるよ」といっ君がこっそりと教えてくれた。
自分はてっきり、さっちゃんが溺れるのかと思っていた。

担任のケイコ先生はプール学習が始まってから、隣クラスのミチコ先生からさっちゃんの爪の事を聞いたらしく目が赤かった。
(女の先生、特にミチコ先生はネチネチしてかなり怖かった;)
ケイコ先生は「今度からしてきちゃ駄目だよ」と軽くさっちゃんを注意した。
途中で、休憩時間を知らせる笛が鳴った。
さっちゃんはミチコ先生がケイコ先生を怒った事を(何で御前が出しゃばるんだよ的な)逆恨みして、
ミチコ先生がプールから上がった直後にわざとぶつかった。
もちろん、ミチコ先生はプールにバシャーンと派手に落っこちた。
皆、死んじゃったんじゃないかと思ってプールサイドに集まった。
そこはやはり大人で、ミチコ先生は溺れなかった。
さっちゃんに駆け寄って「ぶつかってごめんね。ケガは無い?」と心から心配していた。

「何やってるの!」とケイコ先生が怒鳴りながらやって来て、さっちゃんをプールから追い出した。
「今日はそこで反省していなさい!」
「そんな事はどうでも良いでしょう。大人にぶつかって、跳ね返って頭でも打ってないか見てあげられないの?」
ミチコ先生はピシャリと新人のケイコ先生を叱って、見学していた子にさっちゃんを保健室へ連れて行くよう指示した。
そんな中、プールの真ん中でいっ君がひらひら手を振っている。
「いっ君、どうしたの?」
いっ君の周りが渦になって、いっ君がこんにゃくのようにくねりながら沈んでいく。
「いっ君、危ない!」
泳ぎが得意ではなかったが、とっさに自分は飛び込んでしまった。

103 ME ◆KCYjPGrG56 sage 2011/04/05(火) 21:36:12.41 ID:s/wNHMjH0

ミチコ先生に怒られたケイコ先生はキレていて、何が起こったか解からなかったらしい。
プールの水抜きが勝手に始まり、それによって出来た水の流れと渦に足をとられてあっけなく自分は溺れた。
無事、救助されたが念のため病院送り。
ただ、いっ君は休憩時間中にゴーグルの紐の調整を別のクラスの担任のユタカ先生にやってもらっていたのをほぼ全員が知っている。
だから、プールの真ん中にいっ君が居るはず無い。
それに、いっ君は言った。
「僕はあんな変なプール嫌いだし、MEちゃんが溺れるよって注意したじゃないか」
いっ君は双子ではない。
そういえば、プールの真ん中にたたずむいっ君は水泳帽を被っていなかった。
じゃあ、いったいアレは誰だったんだ?

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