洒落怖
かっぱの手

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今はもう道路が拡張され、新しく歩道が出来て、地下道は下水道になっていたが、
今もあのシミ自体は残っているんじゃないかと思う。

598 3/4 sage 2011/02/26(土) 06:00:36.07 ID:OLU5HdFn0
この話を成人式の二次会で、当時のT君と、中学時代からの友人Yの前で話すと、
隣で静かに訊いていたT君が俯き加減に口を開いた。
「実はあれな……手じゃなかったんだ」
「手じゃない……?」
「まあ自分家の犬があんなことになったからさ、当時相当怖かったんだよ。だから、じいちゃんとか
その手に纏わる事を何か知ってる人はいないかって、必死で訊いて回った事があるんだよ。
それでさ、両端の指短かっただろ?あれが手っていうか、腕で、中の2本が足なんだ」
もう一人の友人が咄嗟に言った。「それって……河童そのものってこと?」
「逆さまにしてみ?」
俺は背筋に寒気を感じながら答えた。
「首のない人の姿……」

599 4/4 sage 2011/02/26(土) 06:04:18.95 ID:OLU5HdFn0
「昔さ、あの地下道の辺りは川だったんだよ。台風が来たときとかよく洪水になってさ、水害が酷かったらしい。
それで、人柱を立てて、堤防を作ったんだよ。人柱ってわかるか?」
Yは言った。「生贄えってことだろ?」
「そう」
「あの場所でそんなことが……」俺は予想だにしない話に唖然とした。
「まあ昔はそんな珍しいことでもなかったと思う。地方なら何処かしらあるんじゃないか?
それで川の神に……女の人の首を捧げたって話らしい」
「まさか、それであのシミが出来たっていうのか……?」
「わからん……どういう経緯で、その人柱が決められたかどうかまでは、
さすがに知っている人はもう居ないだろうし、資料なんて見つからないし……
ただ、いつ頃からか、あの地下道の手のようなシミには、良くない噂が経つ元になった
“何か”があったんだろ?俺が傘で突くより前に」
「とても信じがたいけど、それで……俺が見たあの犬の死体に首が無かったのは……」
「本当にそうなのかは解らんけど、俺は、少なくとも俺は、身代わりになってくれたんじゃないかと、勝手に思ってる」
「じゃあ、あれは……あのシミは”ホンモノ”だったってことか……?」
T君はそれ以上語らず、俺も口を閉ざしていたとき、中学時代からの友人が問いかけてきた。
「ところで、もう一人傘で突いた子がいたんだよな?その人は今は?」
そのもう一人の彼は、中学からは別の学校だったので、小学校卒業後は一度も会っておらず、
実家も引っ越して連絡先もわからないので、その後どうなっているのかは知らない。
少なくとも当時は何も無かったので、たぶん大丈夫だとは思うが……。

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