洒落怖
夢と破滅

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850 本当にあった怖い名無し sage 2010/05/18(火) 19:25:15 ID:oJZHFBsh0
その旅立ちから数年後、村は町になりつつあった。
大富豪の残した土地のうち森の傍には伐採場ができあがり。
また、良い土が取れる場所のすぐ近くにはため池がつくられ。
藁を混ぜた頑丈な粘土が大量に生産されていた。
その粘土が村人達の木製の小屋を補強して、見場はがらりとかわっていった。
その補強などを手伝ったのは、青年が各地からあつめてさせてきた、貧しい職人達であった。
父親があつらえた、豊富な食料生産力を持つ村を、彼が町にかえていく事業だった。
発展ぶりがみとめられると武装警官の数も増員され。
駅には常にテロリストの乗降を監視する目が光るようになっていた。

こうなってくるとほかの株式会社もだまってはいない。
駅がとまるし村には学校もあって、日本語の読み書きも、現地語のよみかきもできる人材がいるのである。
しかも食糧事情のゆたかさから村にはたくさんのこどもがいた。
青年のもとには面会がひっきりなしにおとずれ。
彼は父が残してくれていた土地を安価で提供し。
町の形態をとりはじめた村のすぐ近くに工場などがたちはじめた。
そしてそこで働く日本人従業員を対象とした商店なども誘致されだす。
町にはいくつもの近代建築がならぶようになっていった。
区画整理がはじまるようになると、村人達の農場はつぶさざるをえなかったが。
このとき村人達は大金を手にして、
町のもっと郊外にもっと大きな農耕地を手に入れた。
若干この立身出世から脱落者も出たが、村人の多くが一代でのし上がった。
青年の銅像が大富豪の銅像の横に築かれた。
村人達が交代交代で働き、日本式の神社の神殿のみが築かれた。

851 本当にあった怖い名無し sage 2010/05/18(火) 19:29:13 ID:oJZHFBsh0
…二代がかりの夢はなった。大富豪は自分で町をつくってみたかっただけだ。
彼は江戸開拓事業の頃の文書を愛読書にしていたらしい。
青年は世界中にまだない町を描けるというのがおもしろそうだからやっただけだった
まだまだ発展途上の町を青年は描いた。その町がモデルとなる最初もその次も描き捲ったそうだ。
この青年は後に西洋を中心に人気のある写実主義の日本画家として名を残す人物である。

その後不幸がおとずれる。
そして日本は負けてしまった。
このころテロリスト達が大挙して押し寄せたが。
村人達はすでに二代つづけてのカミサマの熱心な信者だった。
彼らは農耕器具を武器にしてテロリスト達にたちむかい撃退した。
青年とその家族は彼らの護衛のもと釜山港におちのび。
そして泣きじゃくる村人達にみおくられて朝鮮を去った。

852 本当にあった怖い名無し sage 2010/05/18(火) 19:38:58 ID:oJZHFBsh0
その後村人達は苦難の道を歩むことになる。
テロリスト達はまず自分たちが悪徳な日本人を追い出したと主張した。
彼らは逃げ遅れた日本人を襲撃して殺し犯し、その遺産を支持者と山分けにする形で。
目先の利益でつって支持者をかためた。やっていることがやっていることなので彼らはたちまち金持ちになった。
具体的な資金が発言力につながり、日本人たちが発行していたハングルの文書の摘発に動いた。
そこには彼らが李氏朝鮮の王朝系の流れをくむ反体制派であることと、その犯罪行為が描かれているからである。
また現地にあった出版工場を接収して自分たちにつごうのいい本を刷らせるようにした。
このとき、町の学校はハングルの教科書の引渡しを拒んだために、たてこもりをきめた児童や村人ごと焼かれた。
こうなるともう都合が悪い。支持者以外の村人も全員殺すことになった。
そして町はテロリスト達が自分たちのものとして分け合った。
わずかにこの虐殺から逃れた人たちは手元の資金をかきあつめた。
そして、天国から地獄に転落した母国を捨てる決意をして済州島にわたった。
そして密航という手段で日本にやってきた。私の祖父もその一人である。
彼は残念ながら帰化できずにおわったが私の父は日本人だ。もちろん私も。

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