洒落怖

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ギィイィィ・・・

俺は振り返らなかった。いや、恐ろしさで振り返れなかったんだと思う。
ズリッ・・・ズリッ・・・重くなった足を引きずりながら、おかぁちゃん、おか
ぁちゃん、と泣きながら叫んだ。

一緒にあそぼ・・・

確かに聞こえた。おかっぱの子が言ったんだと思う。正確には聞こえたと
いうか心に響いたというか。。。しかし恐怖でいっぱいの俺は、とにかく
逃げたい一心で先へ進んだ。いや、これも正確には進んでいなかった。。。
俺は見てしまった。自分の足元を。重いと感じていた原因を見てしまった。

俺の両足には真っ赤な糸?がフォークで絡め取ったパスタのようにぐるん
ぐるんに巻きついていた。えっ!?何これ! その糸はおかっぱの子から
伸びていて俺の足をがんじがらめにしていた。そしてさっきから聞こえてた
ビシッ!という音はその子が赤い糸を引っ張ってる音だったのだ。。。

俺は「もうダメだ・・・」と思い諦めた。明らかに小学1年生に出来る範疇を
越えていた。

ここで一緒にあそぶんだよ・・・ずっと一緒に・・・

199 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:08:26 ID:0/ZxkvvA0
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そう聞こえたと同時に、ズルズルと本堂の中へ引っ張られてゆく感じがした。
俺は仰向けに倒れ、空を見ていた。フフフッ・・・フフフッ・・・というおかっぱの子の笑
い声と引きずられる音だけが響いた。まるでここだけ時間が止まっているか
のようだった。俺は諦めた。怖さより、もうこれで親や友達に会えなくなる
ことが悲しかった。そして本堂の中に体が入る瞬間、何かがひっくり返った。

バサァァァッ

ひっくり返ったのは俺だった。視線が前後上下左右に揺れまくった。一体、
何が起こっているのかわからなかった。気がつけば本堂を上から見下ろして
いる感じだった。えっ!?俺は足が軽くなったのがわかった。何だこれ!?
と思う間もなく、急降下してそのまま鳥居がある入口のほうまで一気に飛ん
でいった。あろうことかすぐ目の前には、ひ~ちゃんの背中が見える。

俺はそのまま映画のスローモーションのようにゆっくりと地面に足をつけた。
瞬間、時間の流れが正常に流れ始めたのがわかった。俺は振り返ろうとした
が、地面の底から響いてくるようなおぞましい声が聞こえたので固まった。

おぉぉのれぇぇぇ・・・邪魔をしおってぇぇぇぇ・・・

何のことかわからなかった。俺は振り返らずそのまま鳥居の外まで出たほう
がいいと思い、ひ~ちゃんと走った。無事、外へ出るとひ~ちゃんはずっと
俺がそばに付いてきてると感じてたと言った。俺は起こった事を彼に話した。
彼はふ~んと鼻くそをほじりながら聞いていたが、こんなことを言った。

じゃぁさ、それって誰かがおまえを助けてくれたのかもな。

え?誰かって誰だ?

200 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:10:20 ID:0/ZxkvvA0
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日が沈みかけていた。俺は泣きべそをかきながら家に帰り、お袋に話した。
お袋は「それは天狗様が守ってくれたんだね」と言い、おかっぱの子につい
ては、あそこの神社の裏には無縁仏のお墓があるから、たぶんそこに埋まっ
とる子なんじゃないかと言っていた。翌日、俺とお袋はお菓子とおもちゃを
持って、その無縁仏のお墓にお供えした。ゴムボールも3個置いてきた。
たぶん鞠遊びがしたかったんだろうな、と思ったからだ。

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