洒落怖
絶叫

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そこに立っていたのは、半円形の笠を被ったお坊さんだったという

顔は笠で見えず、身なりこそ女と同じように汚れていたが、手には立派な錫杖を持っていた
そのお坊さんが錫杖の先を床に振り下ろすたび、ドン! シャーーーン!! と凄い金属音が鳴るのだという

すると、あの女がそのお坊さんに引き寄せられるようにしてフラフラと歩き出した

548 本当にあった怖い名無し New! 2012/03/12(月) 21:39:57.50 ID:RSoX4Ryt0
逃げ出すなら今しかない。体験者は慌てて荷物をまとめたバッグを持ち、ドアをそっと開けて廊下に出た

見ると、あのお坊さんを見下ろすようにして、あの白いワンピースの女がこちらに背を向けて立っていた
化物のように巨大な見下ろされているお坊さんは、それでも唱える読経には全く乱れがなかったという

(このお坊さんは強い、あの女をきっと退治してくれる――)

急に勇気と安心感が湧いてきた女性は、部屋を飛び出して非常階段に走ったという
最後に体験者が背後を振り返ると、そのお坊さんに射すくめられ、微動だにしないあの白い女の姿があった

ドン! シャーーーン!!

ひーぃぃいいいいーーー……

お坊さんが錫杖を床に叩き付けるたびに、女の方がビクッと震え、その度に見上げるように高かった女の身長が縮んでゆく
間違いなかった。お坊さんが錫杖を鳴らす度、女は小さく小さく、どんどんと縮んでいっていたのだ

549 本当にあった怖い名無し New! 2012/03/12(月) 21:41:02.56 ID:RSoX4Ryt0
もういい、これは最後まで見てはいけないと、体験者はアパートを飛び出した
アパートを離れ、必死に走っていると、不意に体が軽くなり、もう大丈夫だという安心感が全身を弛緩させたという

ドン! シャーーーン!!

ふとアパートを振り返ると、あのお坊さんの錫杖の音が小さく聞こえたという

ひーぃぃーー……

もう悲鳴とも言えないほど小さくなったあの女の声が最後に聞こえた瞬間、
何故か点いていたアパートの電気がフッと消えるのが見えたという

そのまま体験者は友人の家に転がり込み、今しがた起こったことを説明したという
「怖いからやめて!」と途中で友人に話を遮られたが、それが却って、体験者に奇妙な安心を覚えさせたという

そのおかげでその会社をやめる決心がついた体験者は、ほどなくして会社を退職し、今は東京で暮らしているという

550 本当にあった怖い名無し New! 2012/03/12(月) 21:46:45.23 ID:RSoX4Ryt0
以上だ。最初こそノリコシ入道のような怪物なのかと思ったが、読んでいる内に
これは正しく八尺様だと思い当たったので書いてみた

八尺様の「ぽぽぽ……」ではないが、「ひーぃぃいいいいーーー」と繰り返される絶叫が気になった
さらに、白いワンピース、八尺ほどもある天を衝く長身というところに八尺様との共通点を見た

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